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01、契約

 昨年のリベンジを果たすべく、理系探査モノで再び執筆しました。これしか書けないという噂もチラホラ。だがしかし、今度はちゃんと帰ってきましたよ。人数はやっぱり減っていますけれどね。そして、今回はキャラが動いて、たくさん喋ってます。どうぞ、お読みになってくださいませ。

【空想科学祭2011・参加作品】【RED部門】

「すると『第三次捜索隊』ということですか?」

 私は、司令官に聞き返した。

「いや、そういう訳ではない」

 司令官は立ち上がり自分のデスクを回って、私の方へ歩み寄ってきた。

「公になった場合の大義名分は、あくまでも『補給と支援』だ。そこを間違えないでくれたまえ」

 私は司令官を凝視した。

「しかし、第二次捜索兼探査隊からのデータは、また生きているとおっしゃったではありませんか」

 司令官は、咳払いしてから答えた。

「だからこそ『捜索隊』ではマズイのだよ、君」

 司令官は、デスクを回って自分の椅子にドッカリと腰を下ろした。

「第一次探査隊は完全に消息を絶った。だからこそ、第二次捜索隊と銘打つことが出来た。もちろん探査も兼ねてだ」

 今ではとても珍しくなった煙草様嗜好ツールを、司令官はくわえて私を見た。

「その第二次捜索隊ついては、隊員の安否は不明だが、定時連絡には必ずデータを送ってくる。今現在もだ」

 煙草様嗜好ツールを思いっ切り吸って口からは煙が出ないのだが、そんな仕草をした司令官は煙草様嗜好ツールを持ったまま喋り続けた。

「二次隊が探査を続けている以上、支援をしなければならない。そして隊員の安否確認も必要だ」

 私はデスクに手をついて言った。

「しかし、一次隊も二次隊も、そのどちらも期間限定の自立帰還型のスペースシップだったはずです。隊員の行動にかかわらず、シップのコンピュータがスケジュール優先の判断をするはずですし……」

 司令官は、煙草様嗜好ツールをデスクにバン!と音を立てて置いた。

「だから、さっきから言ってるだろうっ! 我々は何も把握できていないんだと。定時連絡の内容は無味簡素、サンプルデータの方がマシなくらいだ。問題は、そのデータに断片的だが、隊員のパーソナルデータが紛れ込んでいることだ。それもダイアリー的なものだ。これが生存を意味するかどうかも分からない。だから面倒なのだよ」

 私はうんうんと首を縦に振って、したり顔で応えた。

「……なるほど。やっと把握できましたよ、あなた方の、いやあなたの事情がね。それで私にどうしろと?」

 肩の釣り上がった司令官は、ようやくホッと息をついた。

「君は、第三次補給支援隊のオブザーバー・クルーとして参加し、一次隊と二次隊の隊員の安否確認と原因調査をしてもらいたい、あくまでも秘密裏にな」

 私はニヤリと笑った。

「高いですよ、これは」

 司令官は私を睨み付けたが、私はもっと鋭く睨み返した。

「そりゃ、そうでしょう。行く場所も明らかで、その場所の事情もおおよそ掴んでいて、それでもなお三回目のシップを派遣するんだ。しかもわざわざ『私』という保険もかけてね。これはリスクが高い証拠だ。それも超一級の危険を伴った『デス・レベル』のオペレーションに間違いないでしょうな」

 苦味走った顔をした司令官は精一杯の嫌味で私に答えた。

「分かった。言い値で構わんよ。ただし、生きて帰ってきたらの話だが」

 私は、握った左手の親指を立てて、司令官に突き出した。

「私は不死身ですから。必ずあなたから大金をぶん取って差し上げますよ」

 司令官は鼻でフンと笑った。

「これで契約は成立したな。仕事だけはキッチリとやってくれたまえ」

「ラジャー」

 私は大昔の"敬礼"をしてニヒルに笑ってやった。

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