表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR

取り替え子として指定された私ですがボロボロにされながら国に必須な水魔法をちゃんと受け継いでいたのでお望み通り出ていきます

作者: リーシャ
掲載日:2026/08/06

 一ヶ月前、妖精王という不思議な種族でありながら強力な摩訶不思議に分類される存在からこの国にとある言葉が降ってきた。


『我が同胞が過去、貴族の娘を一人他家の娘と入れ替えた』


 精霊王の話によれば妖精の一人がいたずら好きな性格で、それが幸いしてたまたま見つけた人間の赤ん坊を入れ替えたとのこと。妖精は気まぐれとは聞いたことがあるけれど、今回のことも気まぐれや戯れの一つなのだろう。

 なんて傍迷惑なことをしてくれたのだと、当時思ったがさらにびっくりしたことに我が家がガッツリその当事者であった。お陰様で、どういうことなのだ!?と連日色んなところからの連絡で右往左往していた。


 そんなことは知る由もない父や母がとにかく忙しそうにしている中、落ち着くことなく過ごしていたウルミネへ密やかに、色んなことが行われていた。


 例えば部屋を使用人部屋に移されるとか。父と母にそれぞれ、八つ当たりと恨みのこもった暴言を受けているとか。

 正直な話、そんなことを言われても困るとしか言えない。仮に妖精王のことが本当ならば、ウルミネにも責任などないはずだ。誰が悪いというわけではなく、単純に妖精のせいである。


 ウルミネが悪いように思って鬱憤を晴らすのは勘弁してほしかった。ただでさえ、身の振り方など探そうとしているのに。

 こちらだって初耳なことに驚いていて、それならばと怒りと苦しさに親たちへ勘当をすればいいと言えば、偽物のくせにと怒られる。

 しかし、勘当はいい案だと夫婦が話し合い、すぐに書類は提出された。二度と当家に関わることを禁ずるという文面。


 ウルミネも個別で弁護士を伴い、事細かに詰めていき見事この家とサヨナラを告げられた。体がもうボロボロだ。痛みも多い。

 使用人のように使われて、使用人たちからも侮られていじめを受け続けている。こちらを見つけた親たちにそれぞれ片方に折檻を受けることも少なくなかった。


 食事も使用人以下で、これなら外に出た方がまともに生きていける。人権を踏みにじられて我慢ならなかった。母親と思っていた女に髪を切られて髪型は今ショート。


 人間、どこまでも残酷になれるとよく知った経験になった。父親に肩を押されて倒れた時、頭を打ちつけて気づくと転生していたことを知ってから、こんなところに居られるかとすぐに勘当を言えたのは今考えてもナイスだ。


 ためていた貯金を持って家を出ると乗り合い馬車に乗った。一人旅だがショートになっているので男の子だと思われているのは幸いしたとも言える。


「やっぱり使える」


 頭を打ってから水魔法を使ってみたらやっぱり使えることに首を傾げていた。うちの貴族は水魔法の名門。役割は国にある貯蔵水の水出し。当主は一番使える存在がなるので、毎回直系が継ぐとは限らない。


 水魔法に関して使えるようになったのは先日なので、それまでは特に水魔法が使えるわけではなかった。今までは使えなくても気にしないでいいと言われていたが、実の娘ではない宣言を受けてから「使えないのはそのせいだった」と言われまくったのだ。


 しかし、今使えているし魔力の量も父より多いかも知れない。母も水魔法を使える貴族の出身なのに、得意なのは違う属性である。そこから導き出される正解が天命のように浮かぶ。


「娘って……私じゃなくて母……あの女だったんじゃ?」


 娘というのは色んな意味がある。ストレートに受け取れば確かにウルミネだ。しかし、妖精や妖精王に年齢が区別できたり、人間の語るわかりやすい言い方をしたりするだろうか?


 娘というのが末代ではなく母のことなら全てに説明がつく。母の娘はウルミネだが、母は他家の娘と入れ替えられたイタズラの本命なのではないか、と。


 髪色も思い出してみたら順当に父の髪色を遺伝させており、母の親たちと母の髪色は違う。属性も継いでいない。


 全ての辻褄がかっちり合ってしまう。ここ数日考えていたが、水魔法を使える己が父の子ではないとはどうしても思えない。


 矛盾してしまうではないか。髪も魔法属性も遺伝している自分が実の子なら、妖精王とやらが言っていた入れ替えた子供はもう一人しかいない。精霊が名指しした家門は自身を除けば一人しかいないのだから。


「そうなると……縁切りしてよかった」


 事実を知った後に「おお、娘よ」なんて言われた日には残虐な事件を起こされても、自業自得な真似を彼らはやった後だ。


 娘よなんて言われても嬉しさなんて皆無。そうなんですねー、あ、お家断絶よろしくお願いします!の境地である。断絶はこちらがあちらの家を継がないし、王家からのお役目である国家事業をする気はないという意思表示。


 誰がボコボコのボロボロにした人間たちの住む国なんて守るものか。民間人たちも民間人たちでこちら側を、まるで犯罪者のように見てきて、やってらんないと引きこもっていた。

 新聞で大きく取り沙汰されればウルミネが本当の娘ではない、水という国民、人間として生命線を担う家門から早く出て行かせろとせっつく。

 現に外にちょっと出歩いたら「水魔法の後継者を返せ」と歩いていただけなのに言われた。周りの人間たちは突然助けてくれることはなく。がっかりしてさらに国を出る決意が強固になったのは言わずもがな。


 新聞の国民の声とやらでも早く見つかってほしいという意見と言葉だらけで、ウルミネの心を心配する記事などない。新聞を売るためにあえて載せていないなんて慰めは望んでない。


 列車に乗って祖国を離れた。この水の魔法の使い道にはいくつも候補があるので今からとても楽しみだ。祖国は水の家門の継承者を失い、力の強さで将来の家門の流れを今後受けれなくなるだろうが、まぁ、がんばってね……としか感想はない。


 祖国を調べて、転生した身で思い出したのは砂漠化が進んでいるということ。水の魔力の後継者がいなくなることで、砂漠化の堰き止めがなくなるかもしれない。

 ウルミネは人間として生きねばならない。祖国がその生きるべき場所ではないのは確か。祖国にいたらいつ誰に命を奪われるかわかったもんじゃない。判明して僅か数日で髪型をガタガタにされ、身体中アザだらけにされたのだ。


 列車から降りては乗り継ぎたどり着いたのは熱い国。太陽が気温を上げてきて汗が本来なら出るが、水魔法を体に纏わせてシャットアウトしているおかげで、春のような暖かさしか感じない。


「水魔法万能万能」


 ここでする商売は決まっている。


「水を売るぞ〜」


 水魔法の使い方をここぞとばかりに使わずに、いつ使うというのか?勿体無いし、絶対に稼げる。市場調査をしてから始めるために歩き出す。


 *


 数年後の水魔法の名門貴族たちは産めども産めども、強い水魔法の使い手が全く生まれないことに焦っていた。次女三女、長男、次男と生むが一人も当主並の水魔法の適性を持つものはいない。水の属性を持つ存在がなかなか生まれないことで過るのは、貴族籍を抹消した長女。


 追い出した形で家から放り出した子供のことが話題に出たのは出産された子供の属性がまた違ったことだ。親族会議でも問題として提起され、妖精どもによって混乱した家門が落ち着いたというのに。


「このままでは継承者が指定されないまま、弱くなるばかり。水の属性を持つ四大貴族の看板を失う」


 前当主でウルミネの祖父に該当する男が言う。ウルミネの父であり祖父の息子は悔しげにテーブルを癇癪と共に叩く。


「なぜ、生まれないっ」


「どうなっている?歴史ではもう生まれていてもおかしくない」


「……すでに生まれているのか。水の属性の価値なしと見放されたのか」


「生まれている!?」


 隠し子でもいるのかとザワザワしたが、答えなど出ない。会議など無駄に時間を浪費するものだとウルミネが近くにいたら鼻で笑っていることだろう。


 祖父は最後に出た意見に嫌な予感がし、たらりと汗を流して行方不明の元孫を見つけ出すよう密やかに配下たちへ指示を出す。杞憂であれと願いながら。


 三ヶ月後、足取りを辿ってようやく全貌がもたらされた。報告書を手に前当主は紙をふるりと揺らしてあまりの失態に呻く。小さく「ああ!」と掠れた声音が勝手に出る。


「水売り!?……適正はなかったはず、だ……その後、提供量が多く王家に卸していた……!」


 暑い国の王家に卸すことで安定した収入を手にして、なかなかの金額を得て人生を悠々自適に過ごしている。しかも、暑い国に住むドラゴン族という強力な力を持つ種族にプロポーズされ、さらなる権力を手に入れていると書かれていた。


 割とすぐに結婚してかなり早い段階で子供を産んでおり、人間とドラゴン族のハーフを産み落としていた。産んだ子供の属性は一人残らず水。さらに、全員種族的に強すぎる力を身に宿しているらしい。


 王家に連なるドラゴン族の子供として水魔法を有料で提供している、と最後の締めくくりがなされていた。


「水属性の継承者が他国に流れているではないかっ!!」


 怒鳴りつけるように頭をぐしゃぐしゃにした元祖父にあたる男は使者をその国に送った。砂漠化という言葉は知られていないが、国が年々暑くなり緑が育ちにくくなっている実感を高位貴族たちはそれぞれ把握しており、王からも水の家門になんとかならないかと相談が激増しているのだ。


 *


「お母様、今日は水で遊びたい」


「いいよ。皆集めてシャワーしよっか」


「うん」


 子供に願われてはおちおち昼寝もしていられない。水売りから始まった商売はボロ儲けだった。暑い国は水がないわけではないが、あればあるだけ買いたがるのが人の質。売れば売るほどドシドシ売れる。

 王家にも契約して水を売れば今度は王城に住まうドラゴン族の男がやってきて、面白い事をしている女がいると噂を聞いてミーハー野次馬精神でやってきた。


 買わぬのなら去れとあしらったのだが、ウルミネの現代の知識も面白がり気づいたら好きだ、と片膝を立てて公衆の面前で大公開プロポーズされていた。


 あれでまた今度、を言えるほど心臓は強くできていないし、自身も結婚などとそこまでではないが話しやすいなと好感度はある方。もう少しお付き合いを経てと濁せば国民たちに冷やかされながらも、焦らす女と猛烈にアプローチを仕掛ける男女として、名物にされるまでに。


 出店があって、見てみたら水売りとドラゴンの夫婦まんじゅうが売られていてネタにされていた。文句を言おうと突撃していったら、ドラゴン族の本人が箱買いしていてずっこけたのは今思い出しても、かなり恥ずかしい思い出だ。


 座っていた椅子から立ち上がるとふわりと腰に手が回されて、夫だと香りで即座にわかった。子供にねだられたから遊ぶのだ、と説明すると彼は目を優しげに和らげて頷く。


 外に行くまでに夫のイハークが外に怪しげな気配があると告げる事でなるほど、と彼の過保護さに納得していく。妊娠もしていないのに、すかさず懐にでもしまおうとする仕草がやや不思議だったのだ。


「多分、私の祖国の元家族かもね。前に話したことがあるでしょ?」


 聞けば頷かれてあの最低な国のことだ、と周知の事実を思い出しているのだろう。彼と歩きながら祖国から人が来たのなら接触を受けるのかも。それとも、ウルミネの子供を攫ったりするのかもしれない。


「私たちの子供たちは強いから返り討ちにされるだろうけどね」


 苦笑してフッと息が漏れる。ドラゴン族のハーフなのだ。人間が偉ぶって攻撃したところで一人も捕まえることなど無理。種族値やステータスに差がありすぎる。


 外に出ると隣にいるイハークから今し方報告されたばかりの、祖国から来た使者らしき者たちが待ち伏せしていた。思っていたよりも随分真正面から来たみたい。裏でやるとドギツい報復を受けると理解しているらしいけど。


「ウ、ウルミネ様でいらっしゃいますか」


「さて、どの人間のことをおっしゃってるんでしょうねえ」


 馬鹿正直に対応する時期は大昔に過ぎた。気付いたところでなにもかも手遅れな祖国。


「っ!こ、この度は……我が祖国の誤った……誤認によって……多大なる」


「ああ、へえ、なるほど?事実は暴かれたってこと?」


 ビクククッ!と肩を震わせる使者ら。ボソボソと話される内容の中はなかなかに予想内でつまらない。推察の通り、母が入れ替えの被害者だったことがわかったのだという。

 母は侯爵家の令嬢として育てられたが、実は男爵家の令嬢と入れ替わっていたらしい。そういった調査はもっと早くやっておくべきだったんじゃないかと、呆れた顔をした。


 なぜ、当時ストレートに皆母を無意識に対象者として外したのか、今でもお花畑すぎると言わざるを得ない。当時ちゃんと捜査していれば、ウルミネを父も母も折檻しなければ祖国に留まっていたはずだ。たらればの話だが。


 父に殴られて壁に叩きつけられたことが原因で記憶が出てきたのだから、叩かねば国を出る大胆な事を令嬢として育てられた女がやるのは、普通に考えてしまうと一つだって考えもしない。


 精々、端の端に家を貰って細々と生きていくのが関の山なのだ。それが、叩かれた勢いで飛び出した。それによって事実が知れたのならよかったのではないか。


「それで何の用ですか?」


 水を子供達に向けて降らせれば使者たちの喉がゴクッ!と大きく動く。目前で水魔法の大盤振る舞いを見せられたのだから、そうなることは予想していた。


「み、水魔法……継承者」


「ん?違いますね」


「いえ、貴方様は水の家門の!」


「絶縁してますし、貴族籍も抹消されてます。なにより、医者にかかって折檻された時の証拠もありますので、私がそちらに帰るなんてするわけないでしょう?当時何をされていたのか知らないわけもないですよね?髪をギタギタに切られて、父には日々体に青あざをつけられてたんですよ?地獄に戻るなんてするわけないじゃない」


 腕を組み、つらつらと続けると使者たちより先に夫のイハークが相手を威圧する。


「ひ、ひ!?」


 ドラゴン族はこの大陸で最強の種族なので人間なんていとも簡単に蹴散らされる。という常識を彼らも知っているので怯えた。

 夫も子供たちにも祖国にされた事を伝えているから、頼まれても誰も行きたがらないしさっさと滅べとさえ考えている。


 彼らがここにいると知ったらこの国の国民たちも怒るだろう。ウルミネの祖国からの話を夫や子供たちがそれとなく知っており、王室の面々も調べて知っているからこの国に入るのも彼らはかなり苦労したはずだ。

 もしかしたらこの中に本来、元父や母がいたのかもそれないが入国許可を得られなくて彼らだけ来た後、だったりして。想像していたら、イハークも子供たちも相手を睨みつけていた。


「戻ってきてもらえないでしょうか」


「観光でもしてまたここに戻ってこいってことですか」


 何が言いたいのかわかってるけど、ぼかす。


「水魔法を貯水庫に、どうか、どうか!」


 使者たちが頭を下げて、体を低くしたがウルミネはうーんと悩んで紙を取り出し、インク付きのペンでサラサラと書き出す。


「うちの水売りは有料です」


 ペラ、と使者たちへ見せた。


「あなたたちの貯水庫となると最低料金は……」


 彼らが数字を見ると息が止まる。


「こんなの払えませんっ」


 悲鳴をあげる面々ににっこり笑った。


「慰謝料抜きの金額なのでこれでも安い方なんですけどね」

最後まで読んでくださり感謝です⭐︎の評価をしていただければ幸いです。皆言葉をそのまま受け取り過ぎました

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ