階段状通路
穴を掘る。
ダンジョンの天井を採掘し、脱出すべく、僕は無心になって穴を掘り続ける。
だが、何も考えていないわけではない。
超集中による研ぎ澄まされた思考力によって、自分の体をいかに効率よく動かすかを考えながら掘り進める。
この作業は、想像以上に難しい。
というのも、僕の体は穴を掘り続けている間にも変化し続けていたからだ。
おそらくは、白龍の尻尾肉を食べた効果だろう。
スーちゃんの体を大きく変貌させるほどの力を持った尻尾肉を食べたことで、きっと僕の体にはそれまで以上に魔力を取り込んでいた状態にあった。
それが、穴掘りという肉体労働の負荷をきっかけに、肉体変化を進めている。
巨大樹を木登りしているときにも、実はこの変化はあったのかもしれない。
ただ、あの時はどちらかというと、スーちゃんによる吸着力の補助のおかげで木登りがしやすかったため、変化に気が付かなかったのだろうと思う。
だが、穴掘りは違う。
岩盤のように硬い空模様をしたダンジョンの天井を掘るためにはスコップを力いっぱい押し付けて掘る必要がある。
そのときの体の使い方は、スーちゃんのスライムスーツがあっても僕自身の力がないと意味がない。
それでも、岩盤にスコップを突き立てたときの衝撃はスライムスーツが吸収してくれるので全然意味がないわけではないけどね。
いずれにせよ、僕はひたすらに硬い天井を掘るために力を入れ続ける必要があり、それが変化をもたらした。
体中の筋肉がより上質なものへと変わっていくように感じる。
ただ、スーちゃんのように体全体が大きくなる、といった変化はなさそうで、きっと筋肉の質の向上に重点を置いた変化なんだろう。
そして、その変化が僕の穴掘りのフォームなどの体の使い方を狂わせる。
手足の長さは変わらない。
なのに、同じ量の筋肉であっても発揮できる出力が劇的に上がる。
つまり、その上がった出力に合わせて新たに体の動かし方を変えていかないといけないわけだ。
だが、肉体の変化はまだまだ終わらない。
出力が上がった肉体をよりよい動きで使いながら穴掘りをしていると再び僕の体は変化していき、そのたびに体の動かし方を修正する必要が出てくる。
慣れたと思った瞬間、またズレる。
追いついたと思えば、また置いていかれる。
まるでイタチごっこだ。
終わりが見えない。
だが、悪いわけではない。
だって、刻一刻と僕の採掘能力は上がっているのだから。
硬い岩盤のような天井をある程度均すように掘り、それ以上は手が届かない高さまで到達した。
しかし、それでダンジョンを脱出できるわけでもない。
もっと上に掘らなければならないけれど、一度方向を変える。
上に広げた穴の側面。
そこを掘っていく。
今度は、草原で掘ったときのように横穴を掘る。
これからの方針としてはこうだ。
僕は、ダンジョンの天井にある硬い岩盤をくりぬいて階段を作ろうと考えた。
真上に一直線の脱出路を作るのは難しい。
なので、縦に掘り、横に広げ、そこを足場にまた縦に掘る。
そうやって一歩ずつ上を目指す。
先は長い。
どこがゴールなのかもわからない。
だが、僕は脱出の望みをかけて肉体の変化に対応しながら、少しずつ岩盤内に階段状の穴を掘り進めていった。
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