おじさんの提案
僕の家の比較的近い場所にあるダンジョン。
そのダンジョンの入り口には監視員のおじさんがいて、出入りする人を監視している。
このおじさんだが、当然のことだけれどダンジョンに無関係の一般人ではない。
きちんとした仕事としてダンジョンを監視している人であり、当然だが、一日中ダンジョンの入り口に立ちっぱなしというわけではなく、休憩も取っている。
そんな監視員のおじさんが休憩している場所こそ、このダンジョンを管理している機関の建物だ。
「いわゆるギルドってやつだな」と、おじさんは言っていた。
そして、そのギルドでは探索者がダンジョン内で手に入れたものを買い取っていて、その中の一つに「ダンジョンの土」というのがあるそうだ。
ダンジョンの土壁に穴をあけて、そこから回収した土を持ち帰ればお金になる。
ギルドの建物に行けば、穴を掘るための道具として大きなスコップを貸してもらえるらしく、土を入れる袋なんかもあるようだ。
ただ、ダンジョンの土の回収は探索者には全く見向きもされないくらいに買取金額が安く、誰もやらないのだそうだ。
まあ、土を数キログラム持ち帰っても数十円にしかならないのであればそれもそうかもしれない。
ダンジョンに入ろうという人はたいていモンスターと戦ったりして素材を得たり、ダンジョンでしか手に入らないお宝を持ち帰ってくる。
そういったもののなかには一つで高級車がポンと買えるくらいの金額で買い取りされるものなんかもあるみたいだから、誰も好き好んで土を運ぼうとはしないだろう。
が、だからこそ、僕にはいいんじゃないかとおじさんがおすすめしてきた。
スコップの貸し出しをしているとはいえ、その数に限りはある。
だが不人気の仕事ゆえに、スコップはほぼ確実に借りられるらしい。
さらに、土を入れる袋や一輪車まで貸してくれることもあるという。
すなわち、お金をかけずに準備ができて、安いけれどお金が手に入る可能性がある。
安い金額での買取であっても、安売りされている軍手を買うくらいの稼ぎには十分なるだろう。
つまり、ダンジョンの壁殴りをするためにスコップでダンジョンの壁を崩して土を回収しお金を稼いではどうか、というのがおじさんからの提案だった。
意外といい考えかもしれない。
ダンジョンの入り口を入ってすぐの場所で壁を掘ってもいいのであれば、今とやることはさほど違いないということだしね。
やることはほとんど変わらない。
殴るか、掘るかの違いだけだ。
スコップ掘りも単純作業だし、やってみれば案外いいストレス発散になる、かもしれない。
まあ、すぐに飽きる可能性はあるけどね。
でも、飽きたらやめて壁でも殴ればいいだけだ。
別にどれだけの量の土を採ってこいと命令されるわけじゃないみたいだし、とりあえず一度試してみるだけでもいいだろう。
翌日、僕はギルドに向かった。
壁を殴るためじゃない。
壁を掘るために。
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