クリーニング
「え? まだ朝の六時よ? もう学校へ行くつもりなの?」
家にある食べられるものをすべて食べるのではないかという勢いで朝食を食べた僕は、部屋へと戻り荷物などを持って家を出ようとする。
それを見て、お母さんが驚いた。
いつも以上に早く起きてきたことにも驚いていたけれど、こんなに早い時間に家を出ていこうとする僕に驚いている。
まあ、当たり前か。
多分、学校の門も開いていないだろう。
当然のことながら、僕は今から学校へと直行するわけではない。
行き先はダンジョンだ。
朝からダンジョンに行き、穴を掘ってから学校へと向かおうと考えている。
ダンジョンで穴掘りの時間をある程度確保しつつ、通学時間のことも考えるとこのくらいの早い時間に家を出る必要があるだろうし、家に一度戻ってくるわけにもいかない。
いつもならばダンジョンには自転車で行っているが、学校は自転車通学が許可されていないからだ。
だから僕はダンジョンまで走り、穴掘り後はダンジョンから学校までもを走って行くつもりにしている。
この方法を思いついたのも、スーちゃんのおかげだ。
昨日の掃除のときにスーちゃんはゴミ拾いだけをしてくれたわけではない。
きっかけは、壁紙の汚れまで取ってくれたことだ。
スライムの体を壁にへばりつかせ、壁に貼っている壁紙そのものは一切溶かすことなく、その壁紙に僕がうっかりボールペンで付けた汚れだけを食べてくれたのだ。
紙の上のインク、しかも壁紙の薄い模様は消さずに汚れとして認識していたインクだけを除去してくれたスーちゃん。
それを見て、僕は着ていたシャツもスーちゃんに渡した。
そのシャツは僕がダンジョンで着ていた服だ。
目立つ汚れはない。
が、ダンジョンで長時間穴を掘り、泥遊びもし、汗をかいたときに着ていた洗濯前のシャツだ。
土や砂がつき、湿っていて、汗の跡も残っている。
その服をスーちゃんに渡して汚れを取ってもらった。
結果は大成功だった。
まるで新品みたいだった。
スーちゃんは服そのものを溶かしたりすることもなく、虫食いのような穴も開けることなく、シャツをきれいにしてくれた。
もともとあったシャツの色合いもほとんど変わっていない。
細かな模様にも変化はないように思う。
だけど、表面についていた細かな砂などはすべて無くなっているし、汗染みや水分もないし、いつどこで着いたのか覚えてもいない食事の時に飛んだであろうソースっぽいシミ汚れもなくなっていた。
これはもう掃除じゃない。
クリーニングだ。
スーちゃんはお掃除のプロであると同時に、クリーニング屋さんにもなれるのではないだろうか。
そう思ったほどだ。
そして、それを見て思いついたのが今日の作戦だ。
学校の制服のままダンジョンで穴掘りをしても、通学途中にスーちゃんに汚れを取ってもらえたら、先生もほかのクラスメイトの皆も、誰も僕が朝からダンジョンで体を動かしてきたなんて考えもしないだろう。
だからこそ、僕はスーちゃんの高度なクリーニング力に期待をし、朝からダンジョンへと走って向かっていった。
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