反抗期の少年
「うるさいな! そんなこといちいち言わなくてもわかってるよ」
普段からある何気ない日常。
その中で、きっと大人からするとごく普通のことを言っただけに過ぎないのだろう。
だが、それが今の僕にとっては無性に我慢ができなかった。
イラっとした気持ちが抑えられず、大きな声を出し、そしてそれだけでは足りなかったのでつい手を動かしてしまった。
ドゴン。
そんな音がして、家の壁に穴が空く。
僕の握りこぶしの大きさで見事にぽっかりとした穴が空いていた。
壁に穴をあけた僕の手は全然痛くない。
家の壁ってこんなに簡単に穴が空くものなんだ、とそれまで怒りゲージマックスだった頭の片隅でそんなことを考えてしまう。
「こら! なにやってるの!! そんなことするならダンジョンの壁でも殴ってなさい!!!」
僕が壁の穴を前にして変なことを考えていると、音を聞いて駆け寄ってきた母さんが怒ってきた。
空いてしまった穴を見て、どうしようと言いながら、自分の推しのアイドルのポスターを上から飾ることで壁の穴を隠してしまう作戦を思いついたらしい。
すぐに別の部屋からお目当てのポスターを持ってきて、どの位置にポスターを貼るかを検討し始めた。
ちょっと悪いことをしちゃったな。
さすがに家の壁に穴が空いたことで少し冷静さを取り戻したけれど、すぐに謝れるわけでもない。
ふん、と鼻を鳴らしながら自分の部屋へと逃げるように舞い戻った。
ダンジョン、か。
母さんが言った何気ない一言が頭に残る。
確かに最近はイライラすることが多い。
というか、母さんがいちいちうるさいんだ。
あれはもうやったのか、だとか、早めにしてしまいなさい、だとかいろいろと言ってくる。
そんなことをいちいち言わなくてもわかっているし、ちょうど僕がこれからやろうかなと思った時に言うものだからついつい反抗しちゃうんだ。
だけど、やっぱり壁を殴って穴をあけちゃったのは悪かったな。
かわりにダンジョンで壁殴りでもすればストレス発散できるんだろうか?
昔はダンジョンなんてものはなかったみたいだけど、十年くらい前に突然ダンジョンができて、その中には魔物がいることが分かったそうだ。
そして、ダンジョンでその魔物を倒したりして強くなる人が出てきたり、貴重なものを手に入れてお金持ちになったりする人もいるって聞く。
僕はまだ学生だけど、確か入口すぐは魔物もあんまりいないから学生でも入ってよかったはずだ。
よし、そうと決まれば早速行こう。
こうして僕は自転車に飛び乗り、ダンジョンへと向かうことにした。
お読みいただきありがとうございます。
ぜひブックマークや評価などをお願いします。
評価は下方にある評価欄の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけけますと執筆の励みになります。




