母との会話
「佑馬、いったいどこに行っていたの? 最近、学校から帰ってきたらすぐに出かけて、暗くなるまで帰ってこないから心配したのよ。宿題もやらないといけないでしょう? ちゃんとやらないと駄目だからね」
「うるさいなぁ。分かってるよ。これから宿題もやるつもりだったんだから、いちいち言わなくてもいいよ」
ダンジョンで無心になって穴を掘る。
最初はストレス発散のためにダンジョンに行って壁を殴っていたけど、今では穴掘りが楽しくなってしまっていた。
なにがそんなに楽しいのか、自分でもよくわからない。
だけど、ひたすら体を使い続けるうちに、自分の体を前より少しうまく使えるようになってきた実感がある。
それが、掘り出した土の量という形で、はっきりとわかるのがいいのだと思う。
頑張った分だけ、「自分はこれだけできたんだ」と実感できる。
そんなふうにして、疲労がたまりつつも満足感のある状態で家に帰る。
すると玄関を上がった瞬間、お母さんからまた余計なことを言われた。
お母さんが「ダンジョンの壁でも殴ってこい」って言ったから、ダンジョンに行くようになったのに。
けど、多分だけど僕が素直にダンジョンに行っていることを話したら、今度は行くなとか言うと思う。
お母さんはいつもそうだ。
僕が何をやっても、最初から「駄目だ」と決めてかかる。
だから、お母さんの言葉が聞こえた瞬間、ほとんど反射的に言い返してしまう。
……うん、そうだ。
僕だって宿題をしなきゃいけないとは思っていたんだ。
わざわざ言われなくてもわかっている。
むしろ、先回りして言われると、やろうと思っていた宿題のやる気まで削がれるんだ。
それくらい、少しは考えてほしい。
だけど、やっぱり宿題はやっとこうかな。
まだ少し先だけど、いずれテストもある。
前のテストでは点数があんまりよくなかったし、次悪かったら塾に通いなさいと言われていたことを思い出した。
クラスメイトの皆も塾に行っているから塾に通うのが嫌とは言わないけど、放課後に塾へ行くようになったら、ダンジョンに行く時間がなくなってしまいそうだ。
今はダンジョンで体を動かしたい。
……あそこにいるときだけは、何も考えなくていいから。
だから、それを邪魔されることが無いように宿題くらいはちゃんとやっとこうかな。
そう考えた僕は、ダンジョンでの穴掘りでかいた汗をシャワーで流してから、晩御飯前にチャチャっと宿題を終わらせるため、机に向かって教科書とノートを広げた。
お読みいただきありがとうございます。
ぜひブックマークや評価などをお願いします。
評価は下方にある評価欄の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけけますと執筆の励みになります。




