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わたくしは何も存じません  作者: 綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢をよろしく


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98/125

98.意外な才能が芽吹いていく

 アウグストは部下を鍛えながら、騎士団の編成に悩んでいた。王城で与えた役割に一部変更を加えて使うか、まったく新しく編成するべきか。膝に甥ラファエルを乗せて、芝生の上でリストを眺める。


「これ、騎士団の人だね」


「ああ、そうだな」


「この人、たぶん隊長より補佐のほうが向いているよ」


 甥っ子の指摘に、アウグストは反論なくそのまま書き込む。ヴィリが興味深そうに後ろから覗き込んだ。あの人はこっち、この人はあっち。ラファエルは淡々と人を仕分けていく。厳しい走り込みでヘタレる部下を見ながら、適性を口にした。


「どうしてそう思った?」


「見てたらわかるよ」


 何でもないことのように返され、アウグストは唸った。斜め後ろで目を丸くしている副官の様子に、どうやら問題なさそうだと判断する。将来、一族を率いるラファエルが優秀なのはいいことだ。人を使う立場なのだから、部下の適性を判断する能力は必須だった。


「助かった、また次も頼む」


「うん」


 頭をぐりぐりと乱暴に撫でれば、ラファエルは嬉しそうに笑った。頑張り屋の姉と、天才肌の弟か。走っていくラファエルを見送り、アウグストは空を仰ぎ見る。ロイスナー公国の未来は明るそうだ。


「驚きましたね、人の適性なんて難しいでしょうに」


 感心するヴィリは、手元のリストに追記された内容を確認しながら呟いた。


「ボス! 不審な入国者を見つけました」


「よし、何人だ?」


「五十人くらいです!」


「は?」


 飛び込んだ伝令に、アウグストが低い声で尋ね返す。びくりと肩を揺らした伝令は、それでも「五十人前後です」と繰り返した。聞き間違いではなかったようだ。


「訓練やめ! すぐに出る、準備しろ」


 部下に声を掛け、自らも大股で歩き出す。その後ろ姿を見送り、ヴィリが溜め息をついた。残された伝令に詳細を聞き、商人の一団らしいと判断する。不審と表現された理由は、商品ではなく家財を運んできたからだ。


 家具を売る商人もいるが、彼らは違うらしい。数か国を渡り歩く商会のほとんどが、本部をカペル共和国に置く。大陸のほぼ中心に位置すること、王政ではなく財産が保障されていること。どの国もカペル共和国の商人を拒むことはない。


 中立な国から、家財道具一式を担いだ商人が逃げてきた? それも商会ごと……? 明らかにおかしかった。かつてアードラー王国の門番を務めた男の判断を褒めたヴィリは、伝令に休むよう伝える。


「時間が戻ってから厄介事ばかりですが、悪いほうへ進むばかりの『前回』よりマシでしょうね」


 なんだかんだ楽しんでいる。ロイスナーが独立したと聞いた時のわくわくを思い出しながら、ヴィリはアウグストの背中を追った。

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― 新着の感想 ―
情報を持ってる集団!あのリスト問題の商人達ですね!しっかり、聞き出さないと!w
不審者だから「厳しめの尋問(婉曲的表現)」しても問題ないよね!(笑)
 カモが葱と鍋と出汁背負って来た。
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