90.謎を解くカギが一つ
姪のガブリエルを担いだアウグストは食堂へ向かい、早めの昼食にありつく。すぐに息子二人がラファエルを連れて合流した。公王夫妻が忙しいため、昼食を一緒に食べる時間がないと連絡を受けている。寂しさを感じないよう、息子達を巻き込んだが正解だったらしい。
「ちょ! ケヴィン兄様。だめよ」
ラファエルの皿から人参を受け取り、口に入れた息子がガブリエルに叱られる。人参の匂いが嫌いなラファエルは、よく残すのだ。それをこっそり皿の上で渡し、受け取ったケヴィンが口に入れた。証拠隠滅というやつだが……目撃されてしまった。
くすくす笑うアウグストの隣で、カールは素知らぬ顔でグリーンピースを避けた。後でこっそり処分しようと考えているようだが、そうはいかない。
「カール……見ていたぞ」
「ち、違いますって! ちゃんと後で食べます」
後ろめたいことがあると口調が丁寧になる。これはケヴィンも同じだった。アウグストは癖から「嘘だ」と見抜いて息子の皿を引き寄せる。スプーンの上へグリーンピースをすべて乗せ、にやりと笑った。
「じゃあ、食え」
「うぐっ……」
はいと答えない。だが諦めた顔で手を伸ばした。それを拒んで「ほら、口開けろ」とアウグストが迫る。諦めて食べさせられたカールは、凄い顔をしていた。とんでもなく酸っぱいものを食べたような、顔のパーツが中央に寄る感じだ。
「……僕、食べるね」
あれは嫌だ。大嫌いな人参を纏めて口いっぱいに入れられるくらいなら、とラファエルが素直に人参を突き刺した。フォークの上の小さな欠片を睨み、目を閉じて口に入れる。ほぼ丸呑みに近いが嚥下した。
「よし!」
食べ終えたところへ、家令のアードルフが呼びに来た。アウグストは少し考え、息子二人にガブリエル達と過ごすよう伝える。ウテシュ王国からの返事が届いたことで、公王夫妻は対応に追われている。まだあの双子が入り込んだ警備の穴を塞げていなかった。
応急処置で騎士や兵士の配置を変えたが、馴染んで活用できるまでには多少の時間がかかる。副官ヴィリにもよく言い聞かせ、指導を徹底しているところだった。
事情を知る息子達は「わかった」とあっさり承諾する。騎士を数人連れて、少し離れた湖へ遊びに行こうと提案した。
「本当? やった!」
喜ぶラファエルに、ガブリエルも嬉しそうだ。四人を送り出し、食堂でそのまま話を聞くことにした。普段はしゃんとしているアードルフが、口を開いては言い淀む。その様子に溜め息をついたアウグストは、立ち上がって椅子を引いた。
父親程の年齢のアードルフを座らせ、向かいではなく隣に腰掛ける。
「どうした?」
「不愉快な質問と承知の上で……お伺いいたします」
しっかり前置きして、アードルフは口を開いた。




