82.双子がやらかした!
ウテシュ国王は受け取った親書に目を通し、額を押さえて呻いた。三人の息子がおり、嫡子は先日婚約式も行った。あと半年もせずに結婚予定だった。その後、少しずつ仕事を移譲する。十年も経てば、譲位が可能だと考えていた。
その下にいる双子は、他国と縁を繋いでもらいたい。そのためゼークト王国へ向かわせた。顔は同じだが性格は多少違う。兄のネロはきついが、弟ミロは甘い。ネロに影響されて悪戯好きだが、ミロのほうが問題を起こさないだろう。
この話はすでにゼークト国王に伝えており、カタリーナ王女と双子のどちらかを娶わせるつもりだった。それなのに、思いもかけない国から抗議を受ける事態になっている。
アードラー王国のロイスナー公爵領が独立して、公国となった。周辺国への承認を求める書簡が届くも、返事をしていない。ウテシュは直接ロイスナーと接しておらず、承認は必要なかった。アードラー王国の内情が乱れているため、関わりたくなかったのが本音だ。
いろいろ動いている者がいるが、完全に把握できていなかった。一番の問題は、動いている者らの筆頭が弟であること。王弟が旗を振れば、付いていく貴族も少なくない。国を割る事態にならぬよう、万が一の可能性も考慮しての縁組であったのに。
カタリーナ王女が逃げ、それを追ってロイスナー公国に侵入した? 護衛は何をしていたのだ。身を守るだけでなく、止めるのが仕事だろう。不法入国、屋敷への侵入、挙句に騎士も交えて戦おうとした? 剣を抜いたのか……。ウテシュ国王は執務室の椅子に倒れるように沈んだ。
「父上、何かありましたか?」
「……双子がやらかした」
親書を手渡した王太子が、しっかりと最後まで目を通して肩を落とす。
「どうします?」
「引き取らないわけにいくまい。賠償金が必要だ。それと……公国の建国に関する承認もつけよう」
この辺で手を打ってくれたらいいが。アードラー王国を支えた影の王家と呼ぶべきロイスナー家が、これで納得するだろうか。それ以上を求められたら、あの子達を切り捨てる必要も出てくるが。
亡き妻によく似た双子を思い浮かべ、ウテシュ国王は溜め息を吐いた。こんな事態になるなら、カタリーナ王女を呼んで顔合わせをするべきだったな。
「引き取りは私が行ってきましょう」
「……ならぬぞ!」
「ですが、誠意を見せるのに最適です。何より、ウテシュ王国の王太子へ手を出すでしょうか」
親書で引き取りを促すくらいだ。双子を持て余しているのはわかる。国王は椅子に深く身を沈めたまま、考え込んだ。
「正式な打診をしたうえで伺えば、あちらも無下には出来ません。弟達を見捨てる選択肢はありませんし……任せてください」
頷くしかない状況に、ウテシュ国王は「頼む」と小さく同意した。




