表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
わたくしは何も存じません  作者: 綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢をよろしく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

74/99

74.押しかけるのは客ではない

 久しぶりに顔を合わせたミヒャエラに、カタリーナは捲し立てた。隠すことなく、縁談を押し付けられたから逃げたと口にする。アウグストに呆れられたばかりだが、彼女はさほど悪いことをしたと思っていなかった。同席したシェンデル公爵夫人クラーラは、表情を曇らせる。


「そう、ですか」


 聞き終えたミヒャエラは、大きく肩を落とした。どこから説明しても、この王女は理解しないだろう。そうわかってしまい、放置するのも問題になると眉根を寄せる。きちんとした手順を踏んで遊びに来たなら歓迎するが、現状は迷惑の一言に尽きた。


 ただでさえ、独立したばかりなのだ。他国との折衝はもちろん、公国内の様々な分野で人も物も足りていない。右へ左へ走り回る夫ヨーゼフの苦労を増やすだけの客人だが、護衛もなしに帰れとも言えなかった。これでもゼークト王国の王女なのだ。途中で何かあればまずい。


「カタリーナ王女殿下」


 クラーラが呼ぶと、王女は明るく笑った。


「なに? いつもみたいにカタリーナでいいのに」


「では……遠慮なく。カタリーナ、あなたの行為はこの国を滅ぼしかねないわ。帰って頂戴」


「……え?」


 親族であるからこそ頼ったのに、出て行けとは? 意味が分からないカタリーナは、アウグストの副官ヴィリの言葉を思い出す。似たような内容をもっと包んで突き付けられていた。戦いの原因になってもおかしくない、誘拐を疑われる場面だと。


 カタリーナは深刻に考えすぎだと受け止めた。強い言葉を突き付けられ、不満を持つ。そこに反省の色はなかった。ゆえに、ヴィリ達の懸念を重要視していない。しかし女性なら理解してくれると思った矢先、クラーラに一刀両断にされた。


「っ、あなたはそんなこと言わないわよね? ミヒャエラ」


「カタリーナ、無礼ですよ。この方は私の娘である前に、ロイスナー公国の大公妃殿下でいらっしゃる。そのような言葉遣いで話しかけてはなりません」


 クラーラが公的な立場を言い聞かせる。大公妃は、ゼークト王国ならば王妃と同じ。王女が対等の口を利くのは無礼に当たる。現実をはっきり突き付けた。


「……カタリーナ王女殿下、ゼークト王国に連絡させていただきますわ。引き取りに来られるまでの間は、滞在を許可します」


 大公妃という単語を聞いて、ぴりりと背筋が伸びたのはミヒャエラも同じだった。母に言われ、やっと理解した。夫ヨーゼフがいない今、この屋敷だけでなく公国の未来も預かっている。親戚だからと自由を許せば、そのツケは払いきれない利子を生む。


 二度と我が子らを不幸にしない。そのために、公国を立ち上げた。アードラー王国と切り離したというのに、ゼークト王国の騒動に巻き込まれたら本末転倒だった。


 黙り込んだカタリーナを置いて、クラーラが立ち上がる。促されたミヒャエラも従い、彼女と同行した侍女だけを残して客間を出た。


「あれでよかったのでしょうか」


「ええ、上等よ」


 責任をもって預かる、などと言い出さなかった娘を褒める。勝手にいなくなっても、滞在を許可しただけなら責任は生じない。家出した王女の行方を知らせるだけでも、義務を果たしたと言えた。幼い子供ではないため、保護する義務は生じない。


「あなたは上手に振る舞えていたわ。私はエッカルトに話してくるわね」


 階段を登る母を見送り、ミヒャエラは不安そうに客間のほうを見つめた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
邪神の被害者が此処にも。小人達が速達の梱包作業に入ります。速達で送り返しましょう。猫作者さんは液体になっていて下さい。
コレ(カタリーナ)を製造・飼育したゼークト王家は大丈夫なんだろうか。同様に教育が敗北しているアードラー王国みたいに、ゼークトにも邪神?教徒の魔の手が伸びてません?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ