71.旧友との再会がもたらす光
大司教セブリアン、その名は教会の一部に深く浸透していた。王都の中央教会に招かれるも、上位職である枢機卿により戻される。その理由は秘され、教会の司教や司祭に知らされることはなかった。追放されないのだから、些細な失礼があったのだろう。
理由を知る枢機卿が口を噤んだため、人々は勝手に憶測した。教会を追放されるほどの罪ではなく、いずれはセブリアンも枢機卿の一員に名を連ねるはずだ、と。
枢機卿の一人が、訪ねてきた旧友と再会していた。片足を失い、義足と杖の硬い音を響かせる友を涙ぐんで迎える。両手を広げ、歓迎を口にした枢機卿こそ……セブリアン大司教を退けた人物だった。
「久しいな、シュテファン。枢機卿になったと聞いていたが……」
「ヴェルナー・シーゲル! 本当にあなたか……女神アルティナ様、御名を称えます。我が友をお守りくださったことに、伏して感謝を」
さっと膝をついて祈りを捧げる友に、老シーゲル伯は苦笑いした。幼馴染みであり、シーゲル伯爵家の親族であったカロッサ子爵家の次男だ。一つ年上のシュテファン枢機卿は、老シーゲル伯の補佐役として期待されていた。だが末っ子の妹が病で亡くなったことをきっかけに、シュテファンは教会に入る。
良くも悪くも、この決断が彼の命を救った。シュテファンは地元のシーゲル伯爵領の教会にいたが、王都へ呼ばれて故郷を離れる。十数年、シュテファンは真面目で一途な性格が教会に合ったのか。順調に階段を登り、枢機卿になった。
故郷で起きた悲劇に駆けつけようとし、教会関係者に止められる。主家や子爵家が滅びたと聞いてから、その鎮魂のため祈り続けてきた。突然訪ねてきた友は、かつて主君に仰ぐと決めた人だ。亡くなったと思い、探そうとしなかった不義を詫びた。
シュテファンに穏やかに応じる老シーゲル伯ヴェルナーは、懺悔するようにぽつりぽつりと語り始める。向かい合わせに椅子へ座り、シュテファンは言葉を遮らずに聞いた。途中で漏れそうな声を手で押さえ、拳を握り、視線をさ迷わせながら。最後まで口を挟まなかった。
「復讐する、あなたの決意を私は肯定も否定もできません。立場が違えば、同じ言葉を口にしたのは私であったでしょう。ただ……対象が間違っています」
怪訝そうに眉根を寄せたヴェルナーの癖は、シュテファンが知る頃と同じだった。言葉で問わず、視線や眉の動きで先を促す。
「この教会内に、女神アルティナ様以外を信仰する者がおります。分かっているだけで、四十年以上前から活動していました。滅びたコンツ王国の復活を目論んでいる、と」
コンツ王国……その名を聞いた老シーゲル伯は、かっと目を見開いた。故郷を蹂躙し、僅か数年でウテシュ王国に呑み込まれた小国だ。敵の姿がおぼろげに見え始めた。
巻き込まれる主君を思い、壁際に立つ執事ベニートは目を伏せる。この方の心が休まる日を望むのは僭越でしょうかと、声に出さず女神に問うた。
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