表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
わたくしは何も存じません  作者: 綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢をよろしく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

65/96

65.ぬかるんだ地面に沈む車輪

 豪勢な馬車が、ぬかるみに嵌まっていた。何日か前に降った雨だろうか。小さな水たまりが出来て、その周囲が柔らかくなる。通った馬車の重みで沈んだら、簡単に抜け出せない。


 公国となったばかりのロイスナー領との国境付近、いや……ぎりぎり向こう側か? 気のいい領民達が境を越えて助けの手を差し伸べていた。


「えいやっ」


「おら。もっと押せ」


 猟師や放牧の仕事に就く者らが、口は悪いが力を合わせている。どちらの領民だろうが、どこの領地だろうが関係ない。ここは手伝うべきだ! 声を上げた元団長アウグストに部下達は「おう」と返した。


「手伝うぞ」


「あ、わりぃな……ってか、騎士?」


「気にするな」


 服が汚れると口にした民に、からりと笑って腕を捲る。今までの制服を着ているが、領地へ戻ったら新しい制服を仕立てるつもりだった。これに袖を通す時間はもう長くない。ならば制服への最後の(はなむけ)に、活躍の場を与えるべきだろう。


 アウグストの意味不明の主張に、部下は大喜びで拍手喝采。すぐに腕まくりをして交じった。呆れ顔のヴィリも、最終的には加わる。


 しっかり嵌まったようで、押して戻ってを繰り返す。何度も勢いよく押し出し、外へ出した。そこで気づいたが、中に人が乗っていたようだ。屋根の上や後ろにも荷物が積んだままだった。それを全部外へ出したら、領民だけでも外へ出せたのでは?


 一言文句を言ってやろうとヴィリが回り込み、降りてきた人物に驚いて目を丸くする。


「団長……」


「俺はもう団長じゃないぞ」


 アウグストは汚れた頬の泥を、乱暴に手の甲で拭う。さらに周囲が汚れたが、本人は満足そうだった。手招きするヴィリの隣に立ち、馬車にいた人物と目を合わせて固まる。


「……カタリーナ、王女殿下?」


「あら、アウグストではなくて? お久しぶりね。馬車が動かなくて困っていたの。助かったわ」


 微笑むのは、ドレス姿の美女だ。ゼークト王国の王女であり、義姉ミヒャエラにとって従妹に当たる女性だった。クラーラは元王女であり、公爵家に臣籍降下した経緯がある。


「伯父様と伯母様が飛び出したと聞いて、追ってきたのよ」


 面白そうなんですもの。ほほほと笑う彼女に、事情が掴めた。中にいたのが王族だったため、ぬかるんだ地面を踏んで外へ出てくれと言えなかったのだろう。従者達がその状態なら、平民である領民が何か意見できるはずがない。納得するアウグストへ、カタリーナは笑顔で要求した。


「ミヒャエラの子供達にも会いたいし、案内して頂戴」


 断られるとは思っていない王族らしい命令に、アウグストは苦笑いした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
問題ないお客様!敵とか敵の関係者とか腐れ王国の関係者じゃなくて良かった!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ