表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
わたくしは何も存じません  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/52

39.予想できなかった現象

 その頃、ある村で不思議な現象が起きた。


 王都へ嫁いだ娘は、家族を連れて戻ってくる。ここから異変が始まった。周囲の家も、出て行った息子が帰ってきたと喜んでいる。朗報が舞い込む一方、外部から流入しようとする人間が増えた。田舎では親族関係がものを言う。祖父の代まで遡ろうと、誰かの親族であることが大事だった。


 王都から離れれば離れるほど、保守的な傾向は強まる。逃げてきた人達が罪人の可能性もあるとして、村は親族ではない者らの移住を拒んだ。近隣ですでに何度か断られていた男が激怒し、声を(あら)らげる。拳を振り上げて、危害を加えようとした瞬間……男は消えた。


 信心深い村人の一人が「女神様のお慈悲だ」と騒ぎ「ご加護の間違いじゃろ」と訂正されながらも、村中に広まる。その間にも、移住を希望した王都からの何人かが、人前で消えた。忽然と、何の予告も音も不思議もなく、ふっと消える。


「消えた連中はどこへ行ったんだ?」


 親族ではないし、構わないか。そんな口ぶりで、村人達は深く追求しなかった。それは周辺の別の村や町でも目撃され、ついには街道沿いで歩いている人が消える現象も発生する。国民全体に噂として広がり続け、神託を得たとして教会が事実のみを公表した。


 ――女神アルティナ様は、()()()()を命じられた。前回と同じ場所でやり直すように。


 勝手に王都を逃げ出して終わりにはできない。教会の示唆する内容は厳しかった。だが、人々は起きている不思議な状況に納得する。親族がいる者は頼っても、戻されない。この意味を「家族は寄り添って暮らすのが正しい。だから王都から家族の元へ戻って生活することは許される」と解釈した。


 正しいかどうかは難しい判断だ。祈っても女神の声は聞こえないのだから。ただ人々は起きた現象から、真意を探るしかない。戻された者は王都で暮らし、家族と暮らして年老いた親を助ける子らは残される。若者が減って崩壊寸前だった村は息を吹き返した。


 老人達はこれこそが女神の慈悲であると感謝し、さらなる祈りを捧げた。


 近隣地域でも噂が聞こえるようになり、領主である貴族の耳にも届き始める。彼らが調査を始めたことで、ようやく全貌が見えてきた。出身地へ戻る場合はそのままだが、縁のない土地への新規移住が取り消されている。そう、取り消しと表現するのが近かった。


 住んでいた土地に戻され、持ち出した家財や家具もそっくり元通り。人の手で行える奇跡ではない。もう一度脱出を試みた者もいたが、やはり戻された。この話が王都で噂になるまで、あと少し。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
神様っておおざっぱなのが多いのに(一人の罪に怒って村ごと沈めるとか)、めっちゃ細やかですねこの女神様。マルチタスク大変そう。
まさかの移動禁止( *´艸`)流石女神様(*゜∀゜人゜∀゜*)♪ 小人達は巻き戻されなくて良かったです。人畜無害は大事。猫作者さんを崇めます。黄金の煮干しと、銀の猫作者さん像。
逃げられない、逃がさない!毒殺犯も横領犯も(同じ奴なのか複数いるか…)戻される?女神様、巻き戻しだけじゃなかった!さすがです!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ