表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
わたくしは何も存じません  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/35

26.騎士団長への仕事禁止令

 毒による暗殺犯の行方だけでも手一杯なのに、さらに便箋が行方不明? 何が書いてあったかもわからない。重要な情報だったら取り返したいが、もし落書きだったら? 家族への遺書だった可能性もあるじゃないか。唸りながらアウグストは、探さない理由を口にする。


「わかりました! 団長は少し休んでください。明日の朝まで仕事禁止、いいですね!?」


 大きな声で話を遮断され、ヴィリが手を挙げる。合図に応えて、部下の騎士が両脇からアウグストを拘束した。まるで罪人のように連れ出される。状況が理解できず、きょとんとしたまま騎士団長は退場となった。


「では私が指揮を執ります。団長への報告は明日のお昼以降にしてください」


 ヴィリの一方的な宣言にも、部下達は大きく頷いて了承を示した。というのも、アウグストは元々考えるより先に体が動くタイプだ。こういった頭を使う事件は苦手どころか、天敵だった。どんどん能力が落ちるとわかっている。


 さらに悪いことが続き、アウグストが眠れていないらしい。女神のやり直しで記憶を持って戻ったアウグストは、後悔と怒りに苛まれていた。両手両足の自由を奪われて転がり、兄の一家が壊されていくのを見ているしかできない。その怒りは身の裡を焼いた。


 どうしてもっと早く動かなかった。無理にでも自分の意見を通せばよかった。今からでも王族を全滅させるべきでは? 民を止めたことも今になれば後悔しかない。苦しめて殺すなら、すぐにでも取り掛かれる。そう思うが、実行すればあの連中と同レベルと気づいて動けなかった。


 動きたい本音と留めようとする理性、両方がせめぎ合って混乱の中にいる。目を閉じれば、処刑の光景が浮かぶのだろう。アウグストにとって、あの悪夢はまだ終わっていない。ゆえに、眠ることが出来ずに夜も見回りを買って出る状況だった。


「もし動こうとするなら、殴って気絶させなさい。私が許可します」


「は、はい」


 そこまで切羽詰まった状況だが、本人は体力があるので大丈夫と思っているところがある。息子のどちらか片方が協力してくれたら……ヴィリはそんな思いを抱くが、すぐに自ら否定した。ロイスナー公爵家の守りを崩せない。


 王家や国の立て直しなどどうでもいい。ロイスナー公爵家が無事であること、これ以外は些末事(さまつごと)だった。重鎮がどれだけ殺されようと、正直、守る気になれない。ヴィリにも記憶が残っているのだ。『前回』守れなかった痛みの棘は、副官である彼の胸にも刺さっている。


「毒の特定に向かいます」


「便箋ですが、文章の一部を確認できるかもしれない、と」


「料理人の尋問終わりました」


「侍従と侍女で、行方の分からない者がいないか確かめてくれ」


 一斉に動き出した騎士に、いくつか追加の指示を出して大きく息を吐いた。二人揃って倒れるわけにいかない。無理にでも寝て食べて、体力を保たなくては。


「騎士団に毒を盛られる可能性って、どのくらいっすか?」


 若い部下にそう尋ねられ、うーんと考え込む。万が一にも、騎士団の機能が麻痺したら……重要人物を殺される危険も出てくる。相手がどこまで非常な策に打って出るか、最悪を想定するべきか。俯いて溜め息を吐く。


「考えることが多すぎて……手が足りません。誰かいないでしょうか。仕事が出来て頭が回り、それなりに己の身を守れる人」


 そんな都合のいい人いないだろ。騎士達が「副官も壊れたか?」と心配する中、ヴィリは突然顔を上げた。


「いた! いる!!」


 何が? 首を傾げる部下にヴィリは、ある人物を連れてくるよう指示を出した。


「逆らえば、殴って気絶させて運びなさい」


 怖い命令に、こくこくと無言で頷いた騎士が二人……大急ぎで出発する。目的の人物がまだ王都にいることを祈りつつ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
騎士団長…想像以上にお疲れだった!! いったい誰を連れてくるのか…その人物がすんなり来てくれるのか…顔にアザつくって担がれてくるのかw逆に向かえにいった人が殴られて気絶させられて、その人物に引きずられ…
よし、こういう時こそ外部委託(アウトソーシング)だ! 騎士団がそれをやるって、相当追い詰められてますなー 人手不足が深刻すぎる……
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ