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わたくしは何も存じません  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!


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25.増え続ける謎に叫びたくなる

 王都の商店が一斉に店じまいを始めた。その連絡は、誰もが予想した話だった。『前回』を知っていれば、王族への不信が先に立つ。国王が寝込んでいたかどうかは、民には関係なかった。無実のロイスナー公爵家が、冤罪で処刑された事実だけが広がっていく。


 自分達もいずれ殺されるのでは? そう考えた一部の貴族が領地へ引き揚げ始めた。続いたのは、貴族の庇護を受ける商会だ。数か国を旅する大商会も、他国の支店へ財産や商品を移動させ始めた。


「税金の軽減だ。中間で抜かれていた分を、そっくり返すと言え」


 商人達を引き留めるための政策を打ち出す。グスタフ王の命令で、宰相ヤンが指示を発した。財務を担当するボルマン子爵が亡くなったことで空いた椅子を、王弟イザークが埋める。計算に強いイザークの参加で、ひとまず政は動き出した。


 ほっとしながら、バーレ伯爵アウグストは犯人捜しに乗り出す。毒殺の範囲を調べるため、王宮に残っていた毒見達が残ったスープを確認した。匂いや色で判別できない場合、口に含んで吐き出す方法で作業は進められた。これに関しては専門家が必要な分野だ。


「国王陛下を含む、全員のスープから同じ毒が発見されました」


 キノコから抽出された毒を濃縮せずに混ぜた。スープ皿に盛られた量の半分も飲めば、致死量に達するとの見解が出る。つまり、あの監禁状態の重鎮すべてを片付けようとした人物がいたのか。ぞっと背筋が寒くなるアウグストだが、副官アンテス子爵ヴィリは冷静だった。


「団長、まだ絞れませんね」


 顔を突き合わせた騎士からも、様々な意見が出ている。全員を殺そうとした説、一人を狙ったがカモフラージュで全員に盛った説、どの器が誰に届くかわからずすべて混入させた説、かく乱を狙っただけで誰が死んでも構わなかった説。他にも微妙に違う説が並んだ。中には誰も飲まないと踏んだ説もある。


「結局、毒を盛った人物の目的は不明のままか」


 混乱が深まっただけのようだが、少なくとも人の命を軽視する相手だという覚悟はできた。アウグストは騎士達にさらなる証拠集めを要請する。そこで、思わぬ言葉が聞こえた。


「そういえば……客間の備品は基本的に全部同じと聞きましたが、片付けに来た侍従が奇妙なことを言っておりまして」


 財務大臣だったボルマン子爵が使った部屋を片付ける際、侍従が首を傾げていたらしい。というのも、机に備え付けのペンに使用の形跡があり……便箋も減っている。だが、その便箋が見当たらないと。


「捨てたのではないか?」


 書き損じただけだろう。騎士は侍従にそう告げたところ、空のゴミ箱を見せられた。死体が見つかってから、部屋は封鎖された。だとしたら誰も便箋を持ち出していない。にもかかわらず、便箋がないとしたら……?


「持ち去られた?」


 誰が、いつ、何の目的で? さらに増えた謎に、アウグストは乱暴な所作で髪を乱した。


「くそっ!! こういうのは、俺の苦手な分野なんだよ!」

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― 新着の感想 ―
影とかの諜報特化がを作ってなかった弊害が
毒殺犯は税金横領中抜き犯!!誰だったのか、今はどこにいるのか…。複数の可能性もありますね!ドクズ王子とドクズ性女と同じく断罪せねば!
それこそこういう時に王様や宰相に情報持っていくのが騎士団長さんのお仕事なのになぁ……(笑) 捜査だの追跡調査だのはともかく、推理は仕事じゃない立場だよね
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