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わたくしは何も存じません  作者: 綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢をよろしく


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176/177

176.その閃きは女神の助けか

「何をしてっ! ……いや、いい」


 何をしていたと怒鳴り込んだアウグストは、ぼろぼろの状態の騎士達に眉根を寄せた。彼らに状況を確認しなくては、犯人の目的も分からない。天使であるガブリエルは女神アルティナ様の加護がある。だから傷つけられることはないはず。


 そう思いたかったが、アウグストには一つ懸念もあった。『前回』の神託が下りたとき、あの時点でガブリエルはすでに天使だった。にもかかわらず、望まぬ婚約を強いられ殺されたのだ。もしかしたら、また命を奪われるような危機が来なければ、女神様は動かないのではないか。


 不安がどっと押し寄せる。


「申し訳ございません……後ろから、襲われまして」


 一人は動けず、意識もまだ朦朧(もうろう)としている。同僚の騎士が必死に説明を始めた。彼も気が急いているため、声が震えている。頭に巻かれた白い包帯には血が滲んでいた。


「質問する。順番に答えてくれ」


 彼に語らせるより、聞きたい部分を尋ねたほうが早い。アウグストの判断は結果的に正しかった。混乱し、申し訳なさでいっぱいの騎士は言葉が出てこない。謝罪すると言い訳が生まれ、言い訳した事実にまた謝罪する。


「相手は何人だ?」


「少なくとも三人以上でした」


 促されて二度の深呼吸をした騎士が、少し落ち着いて返す。フードを目深に被った二人がガブリエルを連れ去ろうとし、柄に手をかけた自分が後ろから殴られ倒れた。痛みに耐えて身を起こしたところで、隣に倒れた同僚に気づく。


 倒れ方が悪かったか、大量に出血していたらしい。運ばれて治療を受けて初めて、後ろからナイフで脇腹も刺されていたと知った。そこまで語り、騎士は一つ大きく息を吐いた。吐いた分だけ息を吸い、眉根を寄せたアウグストに頭を下げる。


「公女殿下をお守りできず……」


「それはあとだ。特徴を教えてくれ」


 言葉を発したか、どこかの国の訛りはないか。姿かたち、身長、体形、髪色……なんでもいいと詰められ、騎士はしばらく視線を泳がせた。考え事をしながら天井へ目をやり、はっとした顔で口を開く。


「そういえば! 言葉が少し……同僚のアレクに似た訛りで……。あいつはアードラー王国の出身だった!」


 同僚と同じ訛りがあった。「引き揚げろ」と叫んだ男の声を思い出す。わずかに語尾が上がる、癖のような小さな違いだ。後ろの男はこの国の出身だろう。


 そこまで聞いて、アウグストは表情を険しくする。アードラー王国の関係者で、元王太子の婚約者に危害を加えそうな相手。心当たりがありすぎて、浮かんだ数人の顔を思い出す。その途中で、先日見かけた男が頭をよぎった。


 アウグストだけではなく、ガブリエルも見た気がすると首を傾げた。つまり二人とも見覚えがあるのに、所属や肩書き、名前も思い出せない? そこにヒントがある、とアウグストは己の勘を信じた。これこそが女神の助けであると疑わない。


「早く治して捜索に加わってくれ」


 まだベッドから起きられない二人の騎士に挨拶し、部屋を出て大股で歩いた。

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― 新着の感想 ―
アードラー終了のお知らせ? 多分どっかの阿呆が「ぼくがかんがえたさいこうのさくりゃく」を実行したんだろうけど……(笑)
 『神罰』による混乱からまだ立ち直っていないアードラーにまだ死にたがりがッ!? 国王ら重鎮たちの胃に穴が空いちゃう…ッ‼
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