164.寂しさを埋める甘い菓子
穏やかにお茶会が終了し、クラーラは思惑通りに進んだことに気分を良くしていた。リーム男爵家の夫人と令嬢へ直接謝罪を伝える意味で、ガブリエルが小さなお茶会を申し出たこと。これは外交の手管を覚えたロイスナー公女として、評価に値する。
孫娘のお茶会に少しだけ顔を出し、勘違いの詫びをしたい。あの時、店員が妙な目配せをした。それで勘違いが発生したのだが、今思えば何らかの意図があったのか気になる。そちらの調査は夫エッカルトに任せた。店の従業員は、オーナーと店主以外は平民だ。
もしあの店員が公爵夫人を騙す意図を持っていたなら? または商人でもあるリーム男爵家に害を加えるつもりだったなら。相応の罰を受けるだろう。店も知らないでは済まない。平民が貴族に危害を加えるということは、それだけ重罪だった。
「ソフィーお姉様は明日、メルテンス子爵と会うのですよね。元気になってよかったわ」
帰りの馬車の話題は、小さなお茶会よりメルテンス子爵が中心だった。お茶会でちらりとソフィーが触れたことで、ガブリエルの興味がそそられたようだ。
どんな父親か、根掘り葉掘り聞き始めた。病気がちだが優しく、穏やかな人だと説明されて納得する。ソフィーの纏う雰囲気とよく似た人なのだろう。ガブリエルはそれ以上の追及をやめた。衰弱していたが、医師の許可が出て明日会える。わくわくしているソフィーが少し羨ましかった。
まだ目的地のルイス王国に到着していないのに、もう帰りたいだなんて。お父様、お母様、ラファエルに会いたい。陰を帯びた孫娘の様子に気づいたクラーラが、明るい話題を振った。
小さなお茶会で用意する、茶菓子とお茶の組み合わせだ。
「可愛い薔薇の砂糖があるのよ」
「色がついている?」
「ええ、選べるわ。緑の葉っぱもあるの」
想像して嬉しそうに頬を緩めるガブリエルに、ソフィーがお茶菓子の提案をした。この地方では小さな一口サイズのパイを出すらしい。軽食のサンドウィッチの代わりになると聞いて、想像を巡らせる。甘いパイもあれば、ミートなどの食事用のパイもあるようだ。
「そのパイと……あとは焼き菓子?」
「この場合、焼き菓子はリーム男爵夫人が持ってくるわ。だから崩れやすいお菓子を用意するのよ」
クラーラの言葉に、ガブリエルは納得した。外から訪ねてくる人は馬車に乗る。柔らかなケーキは崩れてしまうから、焼き菓子を手土産とする。代わりに屋敷で準備する側が、崩れやすいケーキやプリンを準備した。
「こないだのお店のプリン、美味しかったわ。あれはどうかしら?」
盛り上がりながら、宿へ到着した。迎えに来てくれると思った祖父がおらず、ガブリエルは首を傾げる。夕飯までに戻るかしら?




