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わたくしは何も存じません  作者: 綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢をよろしく


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122/135

122.場を読まぬ道化の振る舞い

 考えすぎて眠れない夜も、いつの間にか夜明けを迎える。カーテンの隙間、明るくなった窓から朝日が差し込んだ。大事な日なのに、寝不足を悟られてはいけない。子供ながらに、ラファエルはそう感じていた。眠気は訪れないので、欠伸をする心配はなさそう。侍女がカーテンを開けるのを待って、動き出す。


 着替えを終えて、身支度が整ったのを鏡の前で確認する。綺麗に櫛の入った灰銀の髪、目元が赤くなった瞳は青……。父母の色を姉と分け合ったようなラファエルの色は、どこか冷たい印象を与えた。


「おはようございます」


 父母の待つ食堂で挨拶し、二人もあまり眠れなかったのでは? と気づいた。母は顔色が悪いし、父も目が充血している。ラファエルは暗い雰囲気を何とかしようと口を開きかけ、入ってきた従兄二人を見て黙った。


「うわっ、暗いっす」


 入ってきたカールが、アードルフに注意される。ケヴィンはその点ちゃっかりしていて、挨拶だけで余計なことは言わなかった。言葉遣いを正されるせいもある。


「ウテシュ王国の使者は午後ですか?」


「昼過ぎと連絡があった」


 大人の会話を聞きながら、黙々と朝食を平らげる。ラファエルは、次の言葉に手を止めた。


「双子と騎士、()()()()引き渡しますよ」


「構わない」


 どういう意味だろう。ラファエルが首を傾げたのを見て、カールが説明した。塔に閉じ込めた双子は、貴族牢と同等の上質な部屋にいる。だが当然、風呂はない。そのまま渡すとは、入浴させないの意味だったようだ。


 騎士達は別の牢だが、やはり牢なので風呂はなかった。その辺の説明を受けて、ラファエルは静かに頷いた。もし迷い込んだだけなら、客人として持て成すし相応の身支度を整えて帰す。しかし、意図的に不法侵入したのだから、罪人だった。


 公国として、罪人を持て成すのは間違っている。だから何もしないと確認し合ったのだろう。理解するラファエルの様子に、母ミヒャエラは眉尻を下げた。


 まだ八歳、幼くて済む年齢だった。ガブリエルのため独立した弊害が、こんなところに出ている。承知していても、他に道を見つけられなかった。心の中で謝るミヒャエラを、ヨーゼフは無言で見守る。


 記憶がなければ、ラファエルも楽だった。自分達はともかく、息子の記憶は不要だったのでは……そう思う反面、記憶があるから親の言動を理解する。我が儘を呑み込み、惨劇を回避しようと協力した。一長一短、どちらを選んでも苦しい。


「ウテシュの使者……馬車の中で同席するのかな」


 ぽつりとケヴィンが呟く。空気を読まない、場を壊す発言に兄カールが便乗した。


「臭いからか?」


「だって、実際臭うし……」


「そんなん、すぐに宿屋で風呂借りるだろ」


「宿屋が気の毒だ」


 大金を払ってもらったとしても、嫌だろうな。そんなケヴィンの発言に、ラファエルが噴き出した。釣られたようにヨーゼフが肩を震わせ、ミヒャエラが口元を押さえる。


 道化の振る舞いで、深刻な雰囲気は消えていた。

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― 新着の感想 ―
本当に周りが迷惑するよねー 双子とその護衛どもは、その辺理解できるだろうか……?
他国に不法侵入してきた罪人相手に死なない程度には食事も与えてるだろうし、風呂に入れないくらいでガタガタ言うな。…な対応は間違ってないが、ドナドナする人や馬が臭くて迷惑なのが可哀想。
 先ず、人より鼻の利く馬が可哀想だ。箱(馬車)に詰められていても臭いそう。
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