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わたくしは何も存じません  作者: 綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢をよろしく


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113/138

113.コンツ王国の血を絶やすな

 王弟の地位は、非常に便利だった。何かを望めば周囲が手に入れる。献身することに慣れた貴族は、王族を特別な立場として崇めた。まるで神の一柱であるかのように。


 手を伸ばせば、触れることが叶わぬ距離の物事にも影響が及んだ。ローマンは己の持つすべてを、伯父の残した仕掛けとともに活用する。国を出ることなく、一つの国を滅ぼすことさえ可能だった。コンツ王国が滅びた話を聞き、口角を持ち上げてこう口にしたほどだ。


「この身は一柱に匹敵する」


 この傲慢な言葉は、天に唾する行為だ。女神はローマンを許したのではなく、ただ罰する機会を待っていただけ。大地を血で染めた代償を、愚かな男に求めるため。


 監禁用の貴族牢で、愚者は勘違いを加速させる。兄は身内に甘い。この待遇ならまた許されて外へ出られるだろう。次はどの国に仕掛けようか。次の世代には双子がいる。あの子達に何を託そう。ああ、伯父上が仕掛けを自ら発動させなかったのは、このためか。


 柔らかなベッドに寝転がり、ローマンは目を閉じた。





 食事を運んできた侍従が、騎士の護衛付きで貴族牢に入る。料理をテーブルに並べる間、王弟と侍従の間に立って安全を図るのが騎士の仕事だった。逃走できないよう、扉は一度施錠する決まりだ。罪人と同室で閉じ込められるため、安全確保の騎士は必須になる。


 相手が王族なので、護衛も衛兵ではなく騎士に変更された。ベテランの域に入り、間もなく引退だろうか。騎士は綺麗な姿勢で立ち、剣の柄に手を掛けた。ベッドに身を起こしたローマンが立ち上がろうとした瞬間、騎士が剣を抜く。


「え?」


「なに!?」


 若い侍従が驚きの声を上げ、ローマンが目を見開く。その声に反応した牢番が小窓を開け、慌てて施錠した扉を開けた。僅かな時間だ。料理を放り出した侍従が、扉を開けた牢番に抱き着いた。怖いと泣きながら、両手で縋る。


 その間に、騎士は剣を振り下ろした。逃げようと身を捩るローマンの右肩から胸にかけて、剣が走った。皮膚を切り裂き、肉を抉り……血を噴き出させる。だが、牢番の脇から飛び込んだもう一人の騎士が止めに入り、凶行はここで終わった。


 斬りかかった騎士は、コンツ王国の出身だった。当時は騎士見習いで、貴族籍も持たない子供であったために見逃された。剣術を教えてくれた先輩騎士が討ち死に覚悟で残る中、役目を一つ与えられる。


「生き残って、必ず血を残せ」


 コンツ王国の血筋を絶やすな。その命令を彼は忠実に守った。腕を磨いて騎士爵を得て、男爵令嬢と知り合って結婚する。子供を三人もうけ、己の役目に終わりが見えた。そこへ入った情報は、耳を疑うものだった。王弟がコンツ王国滅亡の引き金を引いた?


 投獄されたと聞き、穏やかな笑みと過去の実績で料理を運ぶ侍従の護衛となる。一度しかできない。失敗したら終わりだ。直前に妻とは離縁し、子供達も妻に預けた。共犯を疑われないために、理由は告げていない。


 上司である騎士団長の尋問で事情が判明し、マルクス王は騎士を処罰しなかった。だが彼は自ら辞職を申し出て、受理される。


 ヴェルナー達が入国する、数日前の事件であった。

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― 新着の感想 ―
老伯爵、、、。
いやいやホントにウテシュ王家何してんの? 血族内の不始末、全然管理出来てないよね。 もう、存在自体が害悪の王家になってるよ。 毎世代の凶悪なサイコパスが世代間で遺産相続果たしてるじゃん。 身内を処断出…
謀臣なんぞ身バレしたら恨まれて当然、暗殺の危険も考えていないとは、国王以上に考えが甘すぎる(笑) 伯父が発動させなかったのはこうなる可能性を考慮してたんだろうな…… さあ、シーゲル翁はどうやってとど…
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