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わたくしは何も存じません  作者: 綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢をよろしく


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101/132

101.快適で安全な旅の勧め

 アードラー王国は一度滅んだも同然だ。グスタフ王はそう宣言し、国民に寄り添う新たな政を開始すると約束した。王太子ニクラウスがやらかした話も、包み隠さず公表される。加えて、女神アルティナへの恭順を改めて示し、教会と協力体制を築いた。


 困窮した民への支援、教育を含めた新たな仕事への誘導、孤児の保護。治療院を作る話も、とんとん拍子に進んだ。その際に使用する資金を王族が負担する。国王グスタフの資産はもちろん、ニクラウスが所有していた財産もすべてつぎ込まれた。


 金額の使い道も公表され、人々はようやく落ち着きを取り戻す。王は女神を軽んじておらず、民を見捨ててない。信じるのは先でも、ひとまず協力してもいいと思わせることに成功した。


 ようやく立ち直り始めた王国は、改めてロイスナー公国へ親書を送った。国としての交流を願う、と。





「国も人も、ここまで変わるのか」


 決意表明に近い親書を開き、ヨーゼフは感嘆の声を上げた。そわそわしている義父エッカルトに手渡し、読んでもらう。あれほど忠告しても聞いてもらえなかった『前回』が嘘のようだった。これこそ、女神アルティナ様のご加護と感謝する。


 少なくとも、国を捨てることが許されなかったアードラー国民は救われるはずだ。


「随分と大盤振る舞いしたものだ」


「後がないからでしょうね」


 覗き込んだシェンデル公爵夫人クラーラは、呆れたと示しながら苦笑いする。跡取りを処罰した以上、今後は養子を取って王国を守るしかない。けれど、一番頼りになるロイスナー公爵家は独立してしまった。アードラー王家が打てる手は、たいして残っていない。


「悪くないと思うわ」


 公王妃となったミヒャエラは、穏やかな口調で肯定した。己の血筋が途絶えるとしても、民を路頭に迷わせるわけにいかない。王としての判断なら、マシなほうでしょう。かなり辛辣な意見を交えながら、ミヒャエラはこてりと首を傾けた。


「ところで、ガブリエルとアウグスト殿の旅を許すと聞いたが?」


「女神様のご神託とあれば、お断りも出来ませんからな」


 エッカルトが話題を変え、ヨーゼフが頷く。しばらく考え、エッカルトがにやりと笑った。


「決めた! わしらも同行するぞ!」


「え? 狡い、お父様!」


 宣言した父に、娘ミヒャエラが噛みつく。一緒に行きたいのは私も同じ、と訴えるも……公王妃が国を離れるのは難しい。分かっていた。国を興したばかりで、自由な振る舞いは出来ない。


「ルイス王国へ向かうなら、山脈を避けてゼークト経由だろう。わしらが一緒なら、検問も最優先で通れるぞ。旅費も払うし、最高の宿も手配する」


 利点を並べるエッカルトに、ミヒャエラとヨーゼフは顔を見合わせた。確かに旅の安全と快適さが高まる。多少、速度を犠牲にしても安全優先になるのは、親の視点なら当然のこと。


「お願いするわ、でも……シェンデル公爵家のほうは大丈夫?」


「問題ありませんよ、もし何かあれば、家を捨てればいいんですもの」


 ほほほと笑う妻の発言に、エッカルトは「え?」と目を丸くした。どうやら、まだ息子夫婦に口出しする気でいるらしい。隠居しなさいと突き放すクラーラに、エッカルトが負けるのは数分後だった。

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― 新着の感想 ―
雪!!( *´艸`)小人達も旅に同行します。猫神様の幸運がありますように!!
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