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卑屈な魔王との日常

作者: 柿野豆

「魔王様 おはようございます 朝ですよ 起きてください」


どうも、私は魔王軍の幹部を務めています ルシルです

ここは魔王軍本拠地。あれです、『魔王城』ってところです。今日は私と魔王様の 少し……いや、大分変わった日常をお届けします。


「魔王様ー?もう8時です。今日は9時から幹部会議がありますので、遅刻しちゃいますよー。」


私の1日は、魔王様を起こしに行くところから始まります。そう、魔王様は自分一人で起きられない あまり大きな声で言えませんが、子供のような方なのです。


『……ん、んん…もうす…もう少しだけ…』


「貴方のもう少しは桁が違うのです。この前もそれで数時間も出てこなかったではありませんか。」


『いや…だって眠いし…』


その声はまさに、魔王の名に相応しい腹に響くようなものなのですが…どうも言っていることが…


「いいですか?幹部会議は魔王様がいないと始まらないのです。我々だけでことを進める訳にもいかないのですよ。」


『ええ…いいよもう。我がいなくても上手くいくから……てかいない方がスムーズに進むから…』


みなさん、もう分かりましたね?そう、うちの魔王


くっっそ卑屈なんです。いや、最初からこうではなかったのですよ?それはもう恐怖の象徴として名を馳せていましたから。……魔王様が卑屈になったのは、ある事件がきっかけです。


〜数年前〜


元気だった頃の魔王『がぁぁぁはっはっはっは!!よく来たな勇者よ!!さぁ我に立ち向かって来るがいい!!その全身に満ちた勇気、へし折ってくれるわ!!!!!』


勇者「……いや、あの1ついい?」


魔王『ん?なんだ?』


勇者「ここ来るまで、めっっっちゃ楽勝でさ。その……下手したらそこら辺のダンジョンより簡単で」


魔王『え?』


勇者「だってほら、俺一人だけじゃん。魔法使いとか僧侶とかいなくても全然突破できてさ」


魔王『……はっ、がぁぁはっは!何を言い出すかと思えばただの現実逃避ではないか!!貴様以外のメンバーは全滅し、ただ一人生き残ってしまった!あまりのショックに現実を受け止められず我を前にして現実から目を背け、強がっているだけだ!!違うか!!』


ルシル「……魔王様、この勇者の言っていることはハッタリではないようで…」


魔王『え?』


ルシル「勇者パーティの者をを殺した という報告も入ってきておらず……なんなら私以外の幹部、みんなこいつに殺られてます。」


魔王『え?』


勇者「…なあ、アドバイスって訳でもないんだが……

お前、采配とか色々下手だから、魔王とか向いてないと思う。もうここまでくると平和に暮らしててほしいって思えてきた。真面目に。」


魔王『……』


ルシル「……」


勇者「……」


長い 長い沈黙の末 口を開いたのは



魔王『…なにそれ…我が頑張って準備したやつ…下手とか言う…?勇者に同情されるとか、我…我耐えられない!!!』


ルシル「ま、魔王様!?なんですかその威厳もクソもないセリフと声は!!!」


魔王『だって!だってこいつが酷いこと言うから!采配がへ、下手とか言うから!』


ルシル「大丈夫です魔王様!貴方の采配は完璧です。120点満点です!!」


勇者「0が多い 12だ」


魔王『ほらぁまた!!ひ、人の心とか無いんか!?!?』


勇者「魔王が人の心を語るんじゃあねぇ!!」



その後、「今日は一旦帰るわ。あ、そこの幹部ちゃん可愛いね。もし良かったら一緒にお茶でもどうカナ⁉️」


という勇者にあるまじき言葉を残し帰っていきました




これが魔王様が卑屈になってしまった理由なのですが……いくらなんでも、落ち込みすぎではないですか?


たしかに初対面でダメだしくらったら悲しいとは思いますけど、ここまでなりますかね…私は、勇者が何か特殊なスキルでも使ったのではないかとにらんでいます


「魔王様は、まだ起きないのか?」


背後から聞こえた声の主は、

幹部の一人である ノワールデス


「はい、会議まではまだ時間はありますが、このままだとずっと寝たきりですよ…」


「ふむ……またスイーツで釣るのはダメなのか?」


魔王様は甘いものには目がない。宴で出されたスイーツも全て魔王様が食べてしまうのです。私も食べたいのに……


「それが、今何もスイーツが残ってなくて……」


「そうか…ならば仕方がない。俺が買いにいこう」


「え、本当ですか?かなり助かりますが…人間界に降りるときは十分気をつけてくださいね。バレたら面倒なので!」


「わかってる。では」


……いかがでしたか?きっと、貴方の想像していた魔王城での生活とは大分かけ離れていたと思います。ですが、これが私たちの


卑屈な魔王との日常 なのです。


Fin


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