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第39話 学院生活でのお話

 目まぐるしくもあって、一月などすぐに過ぎてしまいました。


 私は、目を閉じて日々を振り返ります。


 始めの衝撃といえば、間違いなくお嬢様の制服姿かと思います。


 寮のイメージカラーである黒を基調としたデザイン。袖口は長めとなっており、少しだけ手が隠れるほど――なのですが、何故かスカートの裾は短く、太ももが見えそうで意外と見えなかったりします。後に王女様から聞いたお話なのですが、これをチラリズム文明と言うそうです。よく分かりませんが、奥の深い文明だそうで、それを理解するには少なくとも数年間の時が必要とのことです。そのため、私ごときでは上手く理解しきれません。

 

 ただ、言わせてください! お嬢様の生足はとても危険だと思います。お風呂場ではもっと上まで拝見しておりますが、スカートから少しだけ覗く太ももの破壊力はまずいと思います。外に出る時はかならず黒タイツを履いていただくのですが、それはそれで艶めかしい気がして、私の頭がおかしくなってしまいそうです。他の方の場合はそこまで気にならないのですが、お嬢様の制服姿を見ると今だにはらはらとしてしまいます。きっと、私がおかしいのだと思います。


 それにしても、私はこの制服を着なくていいことに関して――心底、ほっとしております!




 そして――授業に関してですが、今のところは座学しかありません。


 教室は、教卓を囲うよう扇状に長机と長椅子が段上に並べられており、一番上の段は中々の高さとなっております。


 机は長めに設計されており、ひとつの机に対して6人で使用できます。生徒数30に対して机の数が倍近くあり、机ひとつに生徒ひとりという贅沢な使い方をしております。お付がいる生徒数は約10名ほど。お付の人は、主人の後ろに座り背中を見守っております。しかし、私は恐れ多くもお嬢様と同じ机で同じ授業を受けているのです。そんなお付の人間は私ぐらいなもので――本当、それでよろしいのかと不安となってしまいます。

 だけど、そんなことよりも問題なのは――授業の内容が全く理解できないことであります!

 クレイワース公爵家のメイドとして、理解している振りはちゃんとしておりますけども。



 お次は、ニーナ様のことです。


 とても可愛らしく、スタイルがいいため――セーラー服もよくお似合いです。


 1年生の中で唯一、ニーナ様はタイツを履かず、生足を披露しております。


「アリーシャと違い、隠す必要性などないわね。私は、自分の美しさに自信があるのだから」


 と、ニーナ様は言いました。


 堂々としたお姿はとても立派であります。


 ネーヴェさんは何だか不安になるぐらい呼吸を荒くし――ニーナ様の後ろで地べたに跪かれる姿をよく見かけるようになりました。その度に、ニーナ様に顔を踏みつけられ――私はその姿を初めて拝見したとき、あまりの痛々しいお姿に心が苦しくなりました。しかし、ネーヴェさんは喜んでいるように見えます。

 それがあまりにも不思議だったため、それは何故なのか――そう、ネーヴェさんに尋ねたことがあります。


「あれは、ニーナ様からのご褒美ですから」


 と、実に幸せそうな顔をなさりました。


 チラリズム文明と同じく、奥が深い話なのだろうと――私は察しました。そのため、あまり気にしないこととしました。


 


 そしてまたまたニーナ様のことなのですが、彼女はお嬢様と関わろうとしてくれます。始めは他にも数名の方が、お嬢様へ話しかけてくださったのですが――今ではニーナ様とセシリア先輩だけとなっております。


 もしかしたら、お嬢様は気難しい方なのかもしれません。話しかけられても、反応することすら稀となっております。思い返せば、昔は私もそうだったなぁーと懐かしさが込み上げて参ります。

 一ヶ月間も無視されようと、関わりたいと思わせるお嬢様は――本当に、魅力的な方なのだなぁーと、私はしみじみと思うのでした。


 だけど、ニーナ様はお嬢様だけでなく私のことも気にかけ、話を振ってくださいます。その度に、お嬢様は大変不機嫌となり、何故かネーヴェさんからも睨まれてしまいます。そのため、ネーヴェさんからは嫌われてしまったのかと――密かに落ち込んでいたのですが、ネーヴェさんは私のことをライバルだと言ってくださいました。それを聞いて、私――とっても嬉しくなりました。こんな私に、ライバルができるとは、全く想像していませんでしたから。


 ライバルというものに、私は昔から密かな憧れがありました。昔、ミオさんの部屋にあった本棚からとある物語を読んで以来の憧れであります。


 その本は、少年ふたりのいがみ合いから始まります。彼らはライバルでした。お互い気に食わない存在でありながらも、気になってしかたがありません。相手を口では貶しながらも、他の誰かがライバルに吐く悪口は許せません。認めたくないのに、誰よりも彼を高く評価していました。そして、度重なる試練がふたりを襲い――友情が育まれていきます。その思いが高鳴る途中で――私はその本をミオさんから取り上げられてしまいました。


「これはまだ、リッカには早い」


 と、ミオさんは言いました。


 何故ですか? と私は聞きました。


 そして、ミオさんは言います。


「男同士の――絡み合うライバル心は、大人の世界の話だからよ」


 と――。


 なるほどと、私は感心したものです。


 ライバルとは――大人の関係なのだと。


 それにしても、ライバルとなったらどうすればいいのですかね?


 お嬢様にそのことを尋ねたのですが――。


「気にしたら駄目よ」


 と、言われました。


 なるほど、気にしたら駄目なのですね!


 そして、知らずうちに友情は育まれる――それが、ライバル関係なのだと、私は理解いたしました。


 きっとあれです、チラリズム文明と同じく、奥深い世界なのであります!

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