09 高級玩具
ワゴン車内。
フルフラットになった後部座席に、短髪で小柄な細身のガキと、タンクトップ姿で全身筋肉質のガキが互いに向かい合ってあぐらをかいている。彼らの間には、白いAラインの短いワンピースを着た女が横たわっている。百六十センチ、四十五キロ、二十歳といった感じか。女は大学のミスコンで優勝しそうな狸顔だ。襟元にレースがついたその服装が、彼女の高貴な印象を際立たせていた。
手足はガムテープで縛られ、口にもテープが貼られた状態で、無力に横たわっている。くねくねと必死に体をよじらせて抵抗しているが、その様子は、まるでイモムシのようだ。
短髪のガキは、黒目が異様に大きく、白目がほとんど見えない。完全にいっちゃっている顔つきだ。彼は片手で女の手首を押さえながら、はだけた胸から首まで、べちゃべちゃになるほど舌を這わせていた。まるで、舐め回すことに恍惚としているかのようだ。
一方、タンクトップのガキは、片手で彼女の足を押さえつけ、指にたっぷり唾液をつけ彼女の体を弄んでいた。
「おぃ!おまえら、わかっているのかー。高級玩具なんだから、もっと丁寧に扱え。絶対傷つけるんじゃねぇぞ、クソガキどもよ。おめえらは猿か。少しは行儀よくしろ!」
助手席に座っていたリーゼントの男が振り返り、後部座席の二人のガキを威嚇した。彼の額に彫られた蠍の刺青が、凄みを一層増していた。
二人のガキの淫猥な行為は、助手席から放たれたリーゼント男の雷のような一喝で一瞬にして動きが止まり、二人のガキは硬直した。
「………………」
空気が一瞬凍りついた。くちゃくちゃとったリーゼント男が噛んでいるガムの音だけが車内にこだましていた。無言の圧力に耐えきれなくなったのか、短髪のガキが慌てて正座をして応えた。「す、す、すいません。こんな上物、久しぶりなもんで、つい……」
タンクトップのガキも正座をして下を向き呟いた。「すいませんでした!」
リーゼントの男は、前を向き静かに目を閉じると、まるで遠い昔を思い出すように、不気味なほど物静かな声で語り始めた。「おまえら、聞き分けがいいじゃねぇか……俺も十年前は猿だったよ」
彼はその言葉を吐きながら、まるで自分の過去を懐かしむように、狂気を含んだ微笑を浮かべた。
「船に乗せるのは三日後だから、それまでにお前らだけで後一人連れて来れたら、その女で少し遊ばせてやるよ」
その言葉に、二人のガキの顔がパッと明るくなった。「オー!テンション上がる!ありがとうございます!マジで頑張らせていただきます!」
彼らは興奮した声で感謝の言葉を繰り返したが、リーゼント男はその反応に対して、冷たく微笑み続けた。「これから連れてくる女も、絶対に傷つけるな。絶対に孕ませるなよ。売りもんなんだからな。傷つけたら指が一本ずつ減っていくと思え……十人で両手は丸坊主だぞ!」
「わ、わかりました。心に、刻みました」二人は息を呑んで、震えながら返事をした。
緊張した空気の中、リーゼント男はおもむろに手を伸ばし、後部座席に小さな緑の箱を投げ呟いた。
「知り合いはヤメロ。足がつくからな。暴れるようならこれを使え」
箱にはサイレースという文字が並んでいた。強力な睡眠薬だ。