21 ペナルティ
コロッセオ 控え室 二日目 十三時。
加藤は、乱れたリーゼントを気にする余裕もなく、目の前に広げた契約書をじっと睨んでいた。普段なら完璧に整えた自慢の髪型も、今は崩れたまま。彼の心は疲弊していた。契約書に目を通すたび、深い溜息が自然と漏れた。すでに何度も読み返した文面には、"拘束"という言葉が明確に記されている。すべてが合法的に進められていたのだ。自分がサインした以上、今の状況に文句を言うことはできない。
「クソッ……」加藤は低く呟いた。後悔が胸の奥から湧き上がる。しかし、いくら後悔しても、ヒグマとの次の戦いは避けられない。今、彼にできることは、この現実を受け入れ、次の一手を考えることだけだった。試合開始まで残り五時間。加藤は目を閉じて気持ちを落ち着かせようとした。
その時、加藤と横並びで座っていた日焼け男が、前を向きながら真剣な表情でぼそりと呟いた。彼の手は震えていた。
「ア、アイデアが浮かびました……聞いて、もらえますか?」
加藤は目を細め、ちらっと日焼け男の顔を見た。彼の提案は期待できないだろうと思ったが、それを口にする前に日焼け男に続けさせた。
「おう、話してみろ」
日焼け男は、言葉を選ぶように少し間を置き、慎重に口を開いた。「食事で支給されたホークやナイフを、こっそり隠して持ち込むのはどうでしょうか?ひ弱な武器ですが、素手よりは数倍いいはずです!目や急所を狙えば、勝てる可能性はあるかと……」
日焼け男の声は震えていたが、必死さが伝わってきた。加藤は腕を組み、しばらく黙り込んだ。冷静を装っていたが、その心中は穏やかではなかった。契約書の文面を思い出しながら、眉間にしわを寄せた。
「ルールでは、武器や道具の持ち込みは禁止されているよな」加藤の声は低く、どこか遠くを見つめるような目つきだった。「たとえ、うまく持ち込めたとしても、すぐにバレるのは確実だ……。ルールを破れば、ペナルティが課される。正直、怖いが——」
一瞬、加藤の目が揺らいだ。しかし、次の瞬間には、口元に冷たい笑みが浮かんだ。「まあ、でも、多めに見てくれるかもしれないなぁ……ダメ元で、やるしかないか」
彼はゆっくりと立ち上がり、荒れた髪をかき上げながら、日焼け男の方の前に立ち座っている日焼け男に向かって応えた。「どうせ、このままじゃ、いつか殺される。少しでも可能性があるなら、賭けるしかねぇだろ……」
加藤の言葉に、日焼け男は力強く頷いた。その顔には、わずかながら希望の光が宿っていた。
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コロッセオ 控え室 二日目 十八時。
ヒグマとの二回目の試合が開始された。
日焼け男、坊主男、加藤の順番で対戦した。
トランクスの中に、隠し持ったホーク、ナイフを使ってヒグマと戦ったので、昨日、素手で戦った時よりは、ずっとましだった。結果としては、坊主男は、内臓を食いちぎられ死んだが、日焼け男は、尻を食いちぎられただけで命は守れたし、加藤は、背中に傷を負っただけで生還できた。
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コロッセオ 控え室 二日目 二十一時。
生還できた二人が試合を終えて、控え室で横になっていると、モニターに迅の顔が表示された。
「卑怯ですね。武器を使うのはルール違反ですよ。相手は、素手なんですから。
相手の選手がかわいそうですよ。
大変残念ですが、ルール違反なので、ペナルティを課させていただきます。
ヒグマくんへのご褒美とたくさんの女性達を傷つけたことを考慮したペナルティです。
覚悟してください!
今から、セキュリティがそちらに参りますので、指示された通りにしてください!」
モニターが消えると同時に、六人のセキュリティが入ってきた。二人は腕を後で拘束され、ケージへと誘導された。
ケージの入り口に着くと、ケージの内側を向いた状態で、外側の金網に貼り付けられた。腕、足、胴体は全く動かせない。ケージの内側から見ると、両手、両足が大きく開かされて、大の字となっている。トランクスの股間は切りとられ、アソコが金網の隙間からケージの内側に向かって飛び出るように引っ張り出された。
さらに、生きた鮭が引っ張り出されたアソコの根本にくくりつけられた。鮭が剥き出しになった股間でピチピチと動いている様は、なんとも間抜けな光景だ。
二人はこれから何が起きるのかということを理解した。いままでの虚勢は全くなくなり、泣きながら懇願したが、その声は届かなかった。
セキュリティがケージから出ると、予想通り、向かい側の入り口からヒグマが入ってきた。ピチピチ動いている二匹の鮭は、すぐにヒグマの目に入った。
三分も経たない間に、二人のアソコと共に、鮭は姿を消した。
男としての機能を失った二人は金網に張り付けられたままの状態で失神した。
迅は二人の光景を見てニヤニヤ笑っている残虐過ぎる自分の行動を振り返って、恨みは、人を悪魔に変えるなんだぁと改めて自覚した。




