13 蠍の刺青
自宅。
午後の静けさを破るように、テレビから気になるニュースが流れ始めた。
【お昼のニュースをお伝えいたします。北朝鮮による仕業ではないかと見られていた連続少女誘拐事件に進展がありました。容疑者は複数の日本人による組織的な犯罪とのことで、警察が一部の容疑者の似顔絵を公開しました】
その瞬間、迅の目がテレビ画面に釘付けになった。ちょうど、三時に東証の後場が引け、株式トレードを終えたところだった。パソコンの電源を落としながら、彼はテレビに映し出された似顔絵に目を凝らした。
映し出された男の特徴が、脳裏に深く刻まれていた記憶を呼び覚ます。リーゼント頭、額には小さな虫の刺青が確認できる。迅は思わず息を止めた。
『これは……虫じゃない……蠍だ!』
確信が脳内を駆け巡った。
「ア・イ・ツ・だ……!!!」
リーゼントの黒髪は、時が経ったせいで茶髪に変わっていたが、間違いなくあの男だった。
『遂に見つけた……!』
その顔――忘れることなどできるはずがない。十年前、彩をオモチャにした男、あの蠍刺青のヤロウが今、目の前に現れたのだ。迅の心に抑えられない怒りが込み上げてきた。
『安全な刑務所なんて、絶対に行かせない……』
彼の手は自然と拳を作り、力がみなぎっていた。目の前の敵を自らの手で裁かない限り、この怒りは収まらない。
『なんとしても警察よりも早く見つけ出して、今度はお前をオモチャにしてやる……』
十年間探し続けた男を、ついに追い詰めるチャンスが来た。
迅はすぐに携帯を取り出し、震える指で110をタップした。すぐに男の声が電話越しに聞こえてきた。「はい、警察です。いかがされましたか?」
迅は深呼吸をし、冷静な口調で答えた。「連続少女誘拐事件の件で、お知らせしたいことがあります。お役に立てるかと思って電話しました」
「ご協力ありがとうございます。所轄の担当から折り返しご連絡いたしますので、連絡先とお名前を教えてください」事務的な女性の声が返ってきた。
迅は淡々と質問に答え、電話を切った。そして、折り返しの電話を待つ間、体中にアドレナリンが駆け巡るのを感じた。目的は、情報を提供することではない。彼が狙っているのは、警察が掴んだ情報の収集だ。
十年前、目の前で目撃した彼ら――関西弁で話していたし、残りの二人の顔もはっきり覚えている。その情報をエサにし、少しでも彼らの居場所を探るため、警察から情報を引き出すことが迅の狙いだった。
五分後、刑事から折り返しの電話がかかってきた。短い会話の後、とにかく警察まで行くという返事だけした。迅は、握り締めた携帯を見つめながら決意を固めた。『なんとしても、警察よりも先に、アイツを見つけ出す……』
心に強く誓うと、怒りと復讐心が彼の体を突き動かした。




