反撃の屍人-14
黒川は顔面から血が噴き出しながらヒールホールドを解いてショートレンジからのストレートを龍二の顔面にヒットさせる。
まさに鬼気迫る眼光。顔に大きなダメージを受けてもその闘争心は変わらない。
そして龍二はすでにガードすらできないほど疲弊していた。
それほどまでに全身全霊をかけたハントであった。
そのパンチの勢いで半身になっている背中が後頭部ごと地面に叩きつけられる。
しかし黒川もサブミッションの態勢のまま腰を地につけたまま自分の血に染まった両手を見ながら、混乱を見せていた。
更に顔の左側を触り、耳がない事に気づく。
ひとつひとつ状況を把握していく過程で、増幅度していく怒り。
血で染まる真っ赤な顔の奥に見えるのは憎悪の形相。
その眼差しが龍二に向けられた瞬間、
『アニキーーーーー!!』
ジョージが叫ぶ。
すると龍二の手元に何かが当たる。
龍二が落としたサバイバルナイフをジョージが勢いよく放ったネコパンチで滑るように床を伝い、誘導されたかのように龍二の手元に戻ってきたのだ。
龍二はそれをしっかり握り、最後の力を振り絞って腹筋運動のように体をグッと起き上がらせて黒川の心臓に深く突き刺した。
血で染まっていく黒川のシャツ。
龍二は目線を黒川に合わせて睨む。
そして中指を見せつける。
「なんだ…氷室のアニキかよ…それじゃあ勝てるわけねえよな…」
黒川の顔から緊張感が消えた。
最後に黒川が見た者は、榊原翼ではなく中指を立てた氷室龍二であった。
そして虚ろな目を閉じぬまま絶命した。
(黒川…。やっぱりお前は強かった。
勝てたのは奇跡に近い。いつか俺があっちに逝ったら今度は酒でも飲みあかそうや。なあ、黒川。)
龍二が感傷に浸る中、
『アニキ!!早くずらかるニャ!!』
ジョージが急かす。
龍二は黒川の足が絡む右足を引き抜き立ち上がろうとするが、膝のじん帯が完全に切れていて歩くことができない。
壁をつたい這うように出口に急ぐ。階段を転げ落ちたどり着いた重い玄関扉を開ける力が残っていない。
「アニキ!!アニキ!!こんなところで倒れちまったら捕まっちまうニャ!!!!!」
ジョージの叫びが遠くなる。自分で閉めたカギを何とか開けたところで意識を失った。




