反撃の屍人-12
「とりあえず、顔見せろや!!」
黒川が間合いを詰めてフードに手を伸ばす。
この部屋は監視カメラが3台。
龍二の思惑の中に顔がバレてはならない事情があった。
この抗争を煽るためには、このガキの姿を見られるわけにはいかない。
それはこの行為の意味を無にすることになるのだ。
この抗争に油を注ぐために乗り込んできたのに、身バレしてしまったらただの鉄砲玉となってしまう。
あくまでも極東一家の刺客として、録画されている監視カメラに映らねばいけないのである。
黒川の腕を払い左に回り込み間合いを取るが黒川の強烈なローキックが龍二の右足にヒットする。
上から振り下ろすローキックは膝上から腰まで衝撃を伝わせる。
身動きを奪われた龍二に黒川の強烈な左フックが龍二の顎を振り抜く。
激しい衝撃で吹き飛ばされる龍二。
壁に打ち付けられてナイフが手からこぼれる。
圧倒的な力の差に龍二は痛む体を起こして黒川を睨みつける。
『アニキ!!』
ジョージが叫ぶ。
(後のことなど考えている状況じゃない…!!)
龍二はハントを使う決意を固めた。
しかしそれには問題があった。この狭い部屋で常に近距離で攻撃してくる黒川との立ち位置が、ハントを出現させて構え弓を引いて発射させるだけの間合いを取らせてくれない。
「おいクソガキ!!そんなひ弱な体でどうやってうちのもんを殺した?」
黒川の言葉を聞き流しながら、どうすればハントの間合いを作れるかを必死に考えていた。
『アニキ、今日は退くニャ!!
勝てる相手じゃニャいニャ!!』
ジョージの悲痛な声を頭に響かせながら龍二はジリジリと黒川と二歩半距離を詰めた。
そして左足を強く踏ん張らせて大きな右ハイキックを繰り出す。
体重の乗った強烈なキックだがいとも簡単に黒川に捕まる。
足を引いて引き剥がそうとするが、先程の腕と一緒で完璧に固められている。
片足でバランスをとる龍二の右足首を肩口でひねらせて無理やり倒しにかかる黒川。
更に引き剥がそうともがく龍二の左足に黒川の強烈なローキックが入る。
背中から地に叩きつけられた龍二の脚を黒川は脇で固定したまま腹部へと体重を乗せて踏みつける。
「とりあえず逃げねえように足潰しとくか。」
黒川は自分を龍二の脚に絡ませるように倒れて膝関節を固めた。
ヒールホールド。
相手の膝がある程度曲がっている状態でかかとに肘の内側をフックさせてから両手をクラッチして両足で相手の膝を固定しつつ、フックした相手のかかとを体ごとひねって極める。ヒール(かかと)と名前は付いているが極まるのは膝関節である。また、足首が同時に極まることもある。
この技は膝を左右にひねるという人間の膝関節の構造上、筋力による抵抗がほとんどできず、技が決まると一瞬にして膝関節の靭帯や半月板等を破壊するため、危険であるとされて多くの格闘技において禁止技となっている。




