反撃の屍人-11
龍二のナイフを黒川は防ぎそのままがっちり捕らえる。
そして黒川の強烈な右パンチが龍二の顔面にヒットする。
あまりの衝撃に後ろにのけぞる龍二を固めた右腕を引っ張られ逃げれず、続けざまに同じパンチが龍二の顔面を振り抜く。
近距離からの二発に龍二の意識が一瞬飛ぶ。
しかし、無理やりこちらの世界に切り替える龍二は強引に腕を引き剥がそうとするが抱えられた右腕は黒川の脇にしっかり掴まれている。
「おまえだな?うちの若いモン殺して歩いている奴は?
どこの組だ?竹内か?山辰か?」
グッと顔を近づけて黒川が問う。
龍二は左でその顔面をスマッシュで狙う。
だがそれを簡単にあしらって、黒川の重い拳がみぞおちに食い込む。
腰から落ちる龍二を固めた腕からグッと引き上げる黒川。
「おまえ誰の手先だ?
どうせここで死んじまうんだ。吐いてしまえば楽に逝かせてやるぜ?」
黒川の不敵な笑みが龍二に火をつける。
すでに黒川の二発で右目の視界がふさがれていたが、近づいた黒川の顔との距離感ははっきりつかめた。
体をそらして勢いをつけて黒川の顔面に頭突きを撃ち込む。
チョッパ(鼻への頭突き)が決まり龍二を拘束する右腕が緩んだ。
そのタイミングを見逃さずに一気に右手を引き抜いて距離を取った。
鼻血をダラリと流す黒川の表情がみるみる鬼の形相に変わっていく。
「おまえ…楽に死ねるとは思うなよ…このやろう…!!」
凄む黒川に龍二は焦りを感じていた。
(くそッ!!この体じゃこれが限界か!?)
そこにジョージの叫びが脳を響かせる。
『アニキ!!早めに片付けて引き上げニャいと舎弟どもが帰ってきちまうニャ!!』
まさに龍二の焦りはそこにあった。
しかし龍二の甘さも否定できない。
黒川程度ならば時間をかけずに始末できるという過信。
だがそれは榊原翼の体でというあたりまえすぎる誤算。
いくら鍛えたといっても空手の黒帯である黒川相手に軟弱な高校生の体では、こうなることは予測できたはずである。
『アニキ!!早くあの弓矢で始末するニャ!!』
ジョージの言葉を聞きながら龍二は躊躇していた。
黒川を殺すためのハントはかなりの生命力を使う。
そうなればここを離脱する力が果たして残っているのか?
使えば仕留められる。
しかし使えばそのあとはわからない。
ギャンブルアタックを迫れた龍二は戦いの中で初めて戸惑いという感情が生まれていた。




