彷徨う亡霊-11
龍二は4人の亡骸を川沿いにきれいに並べた。
これは、なかなか動かない極東一家へのメッセージ込められていた。
(四代目の仇討ちはすでに始まっているぞ!!)
と。
明日の朝には、これが発見されるだろう。
そして一水会は報復と捉えて攻撃が激化する。
それに極東一家は四代目のために動かざるを得ない。
龍二の狙いはそこにあった。
(剛のアニキ…。)
龍二にとって、このメッセージを一番受け止めてほしいのが竹内剛である。
極東一家の中で、最も存在を放っているのが相談役の伊賀才三であるのは理解している。
その伊賀が報復を止めているのはジョージからの報告で解っていた。
しかし、剛にとって四代目は実兄である。
そして一家の中でも最強の竹内組を率いる極道の中の極道である。
自分の親の命を取られて黙っている人間ではない。
きっと伊賀の指示で動けないのであろうことは想像できた。
剛は四代目と同じように下の者に厳しくも優しい男であった。
龍二はその男気に惹かれていた。
そして剛が唯一自分の本音を吐き出せるのは龍二だけであった。
剛と龍二の間には本当の兄弟以上の絆があったのだ。
(剛のアニキはきっと、オヤジと同じように俺の仇を取ってくれる気持ちでいるはずなんだ…。)
そう信じてやまない。
だから龍二は自らこの抗争を煽って剛を鼓舞する。
必要ならば一水会の報復に見せかけて一家の末端の若衆を殺してもいいとも思っている。
自演だろうが、この戦いに一家が本腰を入れるためならどんな手段も択ばない覚悟ができている。
そして頭の中に眠る榊原翼に、
(お前の企みには乗ってやる。だが俺のやり方でやるぞ。
それがお前の望みを叶え俺の報復を成し遂げるためだ。
文句は言わせんぞ。お前が知らない極道の世界をこれから嫌というほど見せてやる。覚悟していろ、榊原翼!!)
と、言い放つ。
龍二は暗闇の中、振り返らずアジトへと足を進めた。
それは迷いのない力強い一歩であった。




