彷徨う亡霊-10
すでに夕日も落ち薄暗い。
龍二はポケットから拳を守るために用意していた軍手を出し装着。
一番ガタイの大きい男が龍二を捕まえにかかる。
龍二はその手を払って強烈なローキックをコンパクトに入れる。
少しよろけた男へ一気に間合いを詰め顎にスマッシュを振り抜く。
そして前のめりになった男の顔面に膝を思い切り打ち付けた。
倒れる男の後頭部に全体重を乗せ踏みつける。
3発入れたところでボキっと首の骨が折れる音が響き、男はピクリとも動かなくなった。
まさに相手の油断をついた奇襲であった。
無力でひ弱な少年のイメージしかない龍二に対して警戒もなく捕獲に来ることは容易に想定できた。
確実に人数を減らしたかった龍二にとって、一瞬で踏み切った作戦であった。
「何が起こった…?」
リーダー格の男が戸惑いながらつぶやく。
仲間のひとりが一瞬にして地に落ちて呼吸すらしていない。
そんな状況を3人は理解できなかった。
(ここからが正念場だ!!)
狙い通りまずひとりを仕留めた龍二が動きを止めた3人に間合いを詰める。
次のターゲットは一番体の細い若い男。
目の前に迫る龍二に、
「うわーーーーー!!」
と奇声あげる男。
龍二は迷わずみぞおちに渾身のボディフックを打ち込む。
体がくの字に曲がる男の両目に迷いなく指を突っ込み目玉をくり抜く。
そのまま指を突っ込んだまま喉ぼとけに強烈なストレートをぶつける。
視界をなくし呼吸の軌道をも絶たれた男は苦しみもがきながら絶命した。
残りは二人。
ここで事態の重大さに気づいたリーダー格の男が、もうひとりに龍二の後方に回り込むように指示する。
挟み撃ちで動きを止める作戦に入ったことがバレバレである。
まだ、あの時の榊原翼と同じように考えていることが読み取れる。
それは龍二にとっては有利な状況になる。
前後に分断された敵は、言いかえれば目の前の一人を確実に倒せばいい。
後ろの敵は龍二を羽交い絞めにして捕縛することが目的であることがバカにもわかる存在。
だから龍二は前のリーダー格だけ見ていればいい。
拳を大きく振りかぶるリーダー格の懐に入った龍二は得意のリバーブローを完璧にヒットさせる。
喧嘩になれていない虚勢だけの男は、顔面への攻撃を重視したがる。
この男もその類だ。
もちろん人間の急所が集中する顔面への打撃は有効だ。
顎へのスマッシュは一撃必殺。目への攻撃は視界を奪える。
鼻にヒットすれば直結する脳の思考も停止させることができる。
しかし、その急所へ確実にダメージを与えるには類まれなパンチ力とヒットさせるパンチコントロールが要求される。
龍二は顔面へのフィニッシュの前に必ずボディーブローとローキックで道筋を作る。その過程により一発で仕留める顔面へのフィニッシュパンチが生まれるのだ。
龍二のリバーブローにより苦痛の表情で態勢を崩す。
そのタイミングで顔面の中央に向かって渾身のストレートをねじ込む。
龍二の拳は男の鼻を潰して後ろに倒れこむ。
そのまま追撃。馬乗りになってマウントポジションからひたすら顔面への連打を討ち続け男の顔が血で染まりどんどん変形していく。
その攻撃を嫌がった男は体を反転させうつぶせになる。
それをまっていた龍二は背後から首に手を回しチョークスリーパーで一気に締め上げる。
頸動脈を確実にとらえた龍二のスリーパーは、男の呼吸を完璧に寸断していた。
背後に待機している男は、身動きすら取れずにそれを見ているしかない。
それはリーダー格の男が死にゆく過程である。
泡を吹いて藻掻くことすら封じられた男に龍二はとどめの角度をつけた絞めで落とした。
さら強さを増したスリーパーで、完全に息の根を止めた。
立ち上がった龍二は振り返り、最後のひとりに視線を変える。
真っ青な顔は絶望の証。
数歩の後ずさりで一気に逃走を開始。
龍二はその後方にぴったりと追走。
河原の土手を上り、中腹まできた男を後方から捕まえ、リーダー格の男同様に首と顔に両手を絡ませる。
龍二の重みで土手を回転しながら転げ落ちる男から身を離さず、遠心力と重力を駆使して思い切り首を捻った。
最後のひとりは首が真後ろに向く状態で地に転がった。
わずか3分での龍二の殺人劇であった。




