彷徨う亡霊-6
龍二は極東一家総本部の近くに来て足を止めた。
見たことにある各主要組の護衛が多数その場を守っている。
幸い本部が見える位置まで近づくことができた。
(ここが限界か…。)
龍二は自分が持っている唯一の礼服である学校の制服のボタンを締め、両手を合わせて目を閉じる。
様々な想いが龍二の脳裏をグルグル回る。
寂しさ、悔しさ、そして怒り。
(俺が傍についていたら…!!)
龍二の中で後悔が襲う。
一水会の罠にハマらなければ死ぬこともなかったし、しっかり護衛できてれば竹内を殺されずに済んだかもしれない。
龍二の瞳に涙が零れる。
(オヤジ…、すまねぇ…。)
その場に佇み、遠くの本部を見ながら手を合わせることしかできない自分が情けなく思う。
ジョージからの情報だと、日本の極道の頂点に君臨する極東一家の四代目の葬儀が密葬だということに憤りを覚えた。
(幹部たちはなにを考えているんだ!?剛のアニキは納得しているのか!?)
そんなジレンマに襲われながら、ただひたすら哀悼に耽るしかない龍二の傍を黒塗りのベンツが通り過ぎる。
(優さんか…?)
見慣れたベンツに龍二はそれが優のものだと確信する。
すると自分の10メートル先でベンツが止まる。
龍二は不思議な気持ちでそれを見ていたが、後部座席から出てきた優が迷いなく龍二に近づいてくる。
戸惑う龍二。
「坊や、この前、私のマンションに来てたわね。
なに?竹内の知り合い?そんなわけないわよね。
なんかあなたのことを知ってる気がする。何者?」
優は優しい口調だが、龍二の背筋に悪寒が走る。
(この目…、この女はすべてを見透かした眼差しで俺を見るんだ…。)
もちろん声が出せない龍二は優を凝視する。
「その喉の包帯…。言葉が話せないのね。」
一瞬にしてすべてを察する洞察力。
(相変わらず怖い女だ。)
龍二はその場を去る素振りを見せて背中を見せる。
すると、
「また会うことになりそうね。亡霊さん。」
と優が龍二の背中に言葉を投げる。
(まさか!?いや…そんなはずはない…俺の正体がバレてるなんて…。)
龍二は今まで感じたことのない不安と恐怖で冷や汗を一滴感じながら足早に真っすぐ歩みを進める。
その間も、背中に突き刺さるような優の視線を感じていた。




