彷徨う亡霊-5
「幹部と親族のみの密葬でいいな?」
極東一家本部に集まった幹部に伊賀才三が最終確認する。
「オジキ!!極東一家の四代目の葬式が、こんな寂しいもんでいいんですか!?」
田辺が詰め寄る。
「兄弟‼オジキの仕切だ。自重しろ!!」
立見が田辺を諫める。
集まった幹部の中には極東一家として大々的に葬儀を行う意見が多い。
しかし、抗争中の葬儀である以上、まずは竹内正久を弔うのが優先だと伊賀才三は判断した。
三代目組長の岡田時代から使える古参の伊賀は極道にあって人格者でもある。
この後には五代目問題も待っている。
だから、まずちゃんと竹内を送り出したい伊賀の本音がそこにあった。
「竹内、今はこれで我慢してくれ。ほとぼり冷めたら盛大にやるから。」
伊賀が竹内組組長の竹内剛に最後の確認をとる。
「俺は何でも構わん。それより早く報復のGOサインを出してくれ。
こっちはいつでもカチコミの準備はできとんじゃ。」
剛は伊賀の問いに、強気で聞き返す。
それに立見が言葉を挟む。
「竹内…。それは伊賀のオジキが段取りを済ませてからだと言っただろう?」
その言葉に剛がキレる。
「伊賀のオジキ!!うちは頭取られて若頭も殺られとるんじゃ!!
オジキのところも舎弟頭の矢部を殺られとるじゃろ!?
龍二の弟分だったイケイケの若衆だったな。
このまま黙っとたら一水会の奴らに舐められる一方やで!!
やつらは邪魔になりそうなイケイケの構成員を狙って殺しとるんじゃ!!
どうするんじゃ、オジキ!!」
詰め寄られた伊賀は、
「一水会の相談役の中村(中村組組長)は俺と兄弟の盃を交わした仲だ。
中村が折れてくれれば、恐れるのは山崎と加藤だけだ。
竹内、もう少し時間をくれ。必ず中村を説得してみせる。」
伊賀の温厚な言葉に剛はさらに怒りを強めた。
「中村も俺が殺したるわ!!誰が何と言おうと俺はやるど!!」
興奮して唾を飛ばしながら凄む剛。
そこで田辺が思い出したかのように口を挟む。
「そういえば一水会の奴らを花街で殺した男の身元は分かったのか?
どこの組のもんだ?」
その言葉に誰も返答をしない。
だが剛が、
「誰だろうがアニキ(四代目)の仇を討ちたい同士に決まってるじゃろ!!
誰かはまだわからんが、そいつが上げた狼煙は消したらあかん!!
これは極東一家に上がった反撃の狼煙じゃ!!」
とさらに興奮した口調で訴える。
混沌とした幹部会は葬儀の10分前まで激しく続いていた。




