彷徨う亡霊-3
龍二はソファーからゆっくり身を起こし悠亜が用意した食事が並べられた小さなテーブルに着いた。
まず目の前にあったみそ汁を一口入れる。
その瞬間、龍二は違和感を覚える。
インスタントの味ではない。
心に染みる深い味わい。
そして悠亜を睨む。
「お母さんに翼くんに差し入れしてるのバレちゃった…テヘ!」
と、ペロッと舌を出しておどける悠亜。
(テヘペロじゃねーよ!お前はほんとに…台無しだよ!
あ~あ、だから言っただろ!!ジョージ!?)
龍二は鋭い睨みをジョージに向ける。
ジョージが目を合わせないまま反論する。
『お母さんはめちゃめちゃ心配しているニャ…。
昨日も俺を抱っこしながら泣いてたニャ。』
ジョージの言葉が龍二の胸に刺さる。
(俺だって心配かけたりしたくねぇよ!!
だけど巻き込みたくもねぇ。しょうがないじゃねえか!?)
龍二もいつの間にか榊原の家族になっていたことを自覚する。
(あっちにもこっちにも親がいやがる…。)
厄介な状況と思いつつも、龍二の顔は笑っていた。
親の愛情など知らずに育った龍二に、今は2人の親ができた。
竹内久正と榊原美佐子である。
竹内の仇をとれば美佐子に危険が及ぶかもしれないし、美佐子の安全を優先すれば竹内への義理を果たせない。
その中間でコソコソと動くつもりだった龍二は、
(覚悟が中途半端なんだよ、俺は…。
両方守るんだ。それが男ってもんだろ!?)
と、自分を責めた。
そして腹を決めこちらを見つめるジョージに、
『一週間だ。一週間で黒川を殺す。そして家に帰ろう。
その後のことはまたその時に考えようや。
これ以上心配かけたらばあさんが死んじまう。』
穏やかな龍二の表情に、ジョージは可愛く、
「ニャン!」
と嬉しそうに返事して答えた。
ジョージも幼いころに親から酷いDVを受けて育ち、初めて美佐子から受ける愛情で親というものを実感していた。
「ごめんね、翼君。
でもね、お母さんには場所までは言ってないから!ホントだよぉ!
だから怒らないで…。」
悠亜が龍二の機嫌を直そうと必死に弁明する。
龍二はスマホを出してLINEを打ち始めた。
【お前が謝る事なんてないんだ。悪いのは俺だ。
一週間で帰る。だからここにはもう来るな。】
それを見た悠亜が戸惑いを見せた。
そして龍二は優亜を軽く抱きしめる。
更に戸惑う悠亜。
(必ず帰るから。ばあさんと待っててくれ。)
龍二は抱きしめる力をギュっと強めて心で約束をした。




