彷徨う亡霊-1
「だから知らねえよ!!」
竹内剛が強く反論する。
「じゃあ、いったい誰がやったんだ!?」
と立見が言い返す。
「俺が聞きてぇよ!!」
竹内組の事務所に響き渡る極東一家の幹部二人の言い合い。
「花街周辺はお前のシマの近くだ。
歓楽街のど真ん中で、堂々と三人も殺せるやつなんてうちじゃお前のとこの若頭しかしらないぞ。」
立見の言葉に、
「若頭?リュウのことか?あいつは死んだよ。
本当に他の組のことは興味ないんだな。」
と剛があきれ顔で言う。
「じゃあ、本当にお前の組の仕業じゃねえんだな?」
立見の念押しに、
「少なくとも俺の指示系統内では誰も動いてねぇ。
むしろお前が持ってる情報を全部出せ。
一体、どんな奴が勝手に狼煙を上げやがったんだ?」
と、剛が逆に問う。
「小遣いをやってる警察関係者の話だが、多くの目撃者がいる中での犯行だった。だがその目撃者のすべてが、状況を説明できなかった。」
立見が聞いた情報を丁寧に話す。
「頭を撃ち抜かれてたんだろう?チャカ(拳銃)の出どこぐらいわかるだろう?」
剛がイライラを隠さず詰め寄る。
「チャカは使われていない。」
「は?」
「チャカで殺った形跡がないんだ。
薬莢も落ちてなきゃ、銃創でもない。」
立見の言葉に、剛は身をグッと乗り出した。
「じゃあ、どうやって頭を撃ち抜いた?」
まるで怪談話を聞いているような感覚が剛を襲う。
「わからん。」
と立見。
「なんだそりゃ!?」
オチのない話に思わず突っ込む剛。
「とにかく今は動くな。
伊賀のオジキの根回しが済むまでがまんしろ。いいな?」
立見が念を押す。
「今はな。せっかく上がった狼煙だ。
明日の葬式が終わったら、うちも動くで。」
剛の顔が真剣になった。
「おい、竹内。気持ちはわかるが…。」
「やかましい!!
親の命取られて、大人しくしとれる極道がおるかい!!
しかも実兄が殺されたんやぞ!?
やられたらやり返すのが極道じゃ!!
取られたら取り返すのが極道じゃ!!」
興奮し怒鳴る剛。
「昨日の緊急幹部会でも決まってんだよ!!
お前は四代目と身内だから出席は免除だったが、伊賀のオジキがこの件の仕切りってことで皆、合意してんだよ!」
を立見は必死に説得する。
「立見、お前…兄貴(四代目)との盃を反故する気か!?」
剛が詰め寄る。
「ばかやろう。俺だってすぐにでも山崎の奴らを皆殺しにしてやりたいに決まってるだろう!
竹内よぉ…、必ずお前の気の済むまで復讐できる時がくる。
まず明日の葬儀をしっかり取り仕切れ。
まずお前のやるべきことをちゃんとやるんだ。」
立見の諭すような言葉に、反論できずに苦渋の表情を浮かべる剛であった。




