漆黒の暗殺者-5
DGが去ったあと龍二は茉莉の事を考えていた。
なぜ茉莉が山崎と繋がっているのか?
もちろんクレイモアという薬がその中心にあるのは間違いないのだが、そこに至る経緯がわからない。
茉莉がクレイモアを常用していたのも驚きだが、山崎が薬をシノギにしていたことも信じられない。
極東一家の中でも薬物とは無縁のイメージしか山崎にはわかない。
ましてやシャブやマリファナではなく、クレイモアというスピードやラッシュのようなSEX剤を扱っていたことにびっくりした。
(茉莉はなぜ薬の密売に関与していたんだ?)
思考がグルグル回る。
結局、考えれば考えるほど最終的にはそこに帰ってきてしまう。
(どうすれば茉莉を救える?)
龍二は気持ちがはち切れそうになる。
極道時代には感じる事のなかった恐怖や不安が龍二を襲っていた。
自分の強さを信じ、竹内に忠誠を誓った最強のヒットマンの姿はもうそこにはない。
無力で薄っぺらな自分の姿に失望する。
髪の毛を掻き毟りやり場のない怒りをため込んだ龍二の背後で扉が開く音がする。
(ジョージが帰ってきたか。)
龍二はそう確信して振り向くと、
「翼くーん!」
と笑顔の悠亜が立っていた。
その足元には目線を合わさなジョージの小さい体。
『おい、ジョージ…。テメエ…!!』
龍二の怒りの言葉に、
『アニキ、怒らないでくれニャ。悠亜ちゃんが、そりゃもう泣きわめいてアニキに会いたいってきかなくてニャ・・・。だから…ゆっくり歩いて連れてきたんだニャ。』
と言い訳をする。
『ジョージ、テメエどういうつもりだバカ野郎!!
しかも早速、家に帰ったのかこの野郎!!』
怒りをあらわにする龍二に、
『アニキ、一本のチュールに魂を売る人生もあるんだニャ…。』
といまだに目線を合わさずに言う。
「翼くん!ご飯持ってきたよぉ!!」
悠亜がご機嫌で言うと、コンビニ弁当をどんどんカバンから出す。
「安心して!お母さんには言わないから!」
と得意げに弁当のビニールを剥がしていく。
龍二は、
【もうここにはくるな】
とLINEを送る。
「やだ!!翼くんがいろんなことを抱えているのはわかってるよぉ。
わたしは翼くんのそばにいたいの。だから、毎日ご飯を持ってくる。
わたし決めたの。翼くんの力になるって。ご飯ぐらいしか持ってこれないけど…。」
悠亜の強い眼差しに決意が見れる。
(バカ野郎…。おめえの気持ちに応えられるような人間じゃないんだ…俺は…。)
龍二に罪悪感がこみ上げる。
悠亜の目の前にいるのは、同級生の姿をした40才の極道者なのだ。
そしてこれから復讐のために人を殺す最低な男である。
『アニキ…、悠亜ちゃんがくる時は俺がちゃんとココが誰かにバレないように警戒するニャ。
だからそんなに突き放さないであげてほしいニャ。』
ジョージが懇願する。
「翼くん…。好きなの。」
悠亜はそういうと龍二に抱き着く。
戸惑う龍二を横目に、ジョージが空気を読んだかのように急いで出口に向かう。
『おい!!ジョージ!?行くな!おい!ジョーーーーーージ!!!!』
龍二は自分の胸をギュッと抱きしめる悠亜に年甲斐もなく狼狽え、動悸が激しく唸っていた。




