漆黒の暗殺者-4
クレイモアは龍二も知っている。
サウジアラビアで開発されたSEX特化の劇薬で、究極の興奮剤と呼ばれる一方、幻覚や錯乱などの副作用も確認されていて、欧米諸国では重い規制がかけられた薬である。
もちろん日本でも例外ではなくクレイモアは特別指定された禁止薬物である。
(茉莉は山崎に脅されてそんなことをしているのか?)
龍二の問いに、
「あなたは意外と純粋なんだね。
薬を扱う人間には様々な理由がある。
しかしそれは後付けの理由だ。
所詮、抜け出せなくなくなるのがヤクの世界だろう?
あなただって極道に身をおいていたならご存じではないかな?」
とDGが笑みを崩さず言う。
(じゃあ、なぜ茉莉は?)
龍二らしくない弱気な声色に、
「それはご自身で確かめられたらよろしいかと。
それはあなたの問題。
翼の問題とは違う。
わたしはあくまでも榊原翼の意思で作られた存在。
あなたが榊原翼の残留思念を満足に解消してくれることがすべてだ。
そこを認識してほしいものなんだが?」
冷淡に答えるDG。
その言葉を聞いた龍二は様々な思考が頭をめぐる。
山崎組は金融系のシノギをメインに置く組織だ。
薬の扱いをしているなど聞いたことがない。
組長の山崎狭一は極東一家の中で、立見組とならぶインテリやくざの筆頭であった。
その山崎がクレイモアなどガキのおもちゃのような薬でシノギを賄っていたことに少しの戸惑いが生まれる。
(山崎の知らぬところで若衆がやっているのか?)
との疑念が生まれる。
龍二は山崎にも直接会ったことがある。
ヤクザ者には見えない紳士のような振る舞いと、物腰柔らかい穏やかな印象の男である。
竹内組の若頭である自分にも優しく接してくれる人格者だ。
だから山崎が薬をシノギにしていることが想像できなかった。
もちろん、そのあたりの感情は親を殺された龍二にとって、かすかな思い出にしかならないが、この件だけはどうしても受け入れることができなかった。




