絶望の放浪者-9
深夜2時。
龍二はカバンに最小限の荷物を詰めていた。
『アニキ、何考えてるんだニャ?』
ジョージが戸惑いの問いをする。
それは夕食のとき、龍二が美佐子に、
【しばらく旅に出たい。】
と言い出したのだ。
「うん、たった一度の青春時代だもんね。
後悔しないように、がんばってきなさい。」
と、美佐子はその意思を受け入れそれ以上聞かずに承諾した。
悠亜は今にも泣きそうな表情でそのやり取りを見ていた。
『ジョージ、やっぱり俺は親父の仇を討たなきゃならん。
だからまずこの家を出る。そして…暗殺家業に戻る。』
龍二の硬い意思が伝わってくる。
『俺はどうすればいいんだニャ?』
不安そうなジョージの問いに、
『お前も一緒に来い。ジョージが諜報活動をして敵と味方の動向を探り、俺が実行する。』
龍二が言うと、
『また野良生活か…。』
と悲し気に言う。
『お前はたまに帰ってくればいい。
その方が悠亜が寂しがらなくていいだろう。』
と優しく話す。
『さあ、行こう。』
龍二はカバンを背負い部屋を出て玄関まで足音を消してゆっくり移動する。
すると下駄箱の上に、
【翼へ】
と書かれた封筒が置かれていた。
それを手に取り中身を見ると1万円札が5枚入っていた。
(ばあさん…。すまねぇ…。)
龍二はその封筒を胸に抱いて感謝を噛みしめる。
そして優しく玄関を開け、龍二は戦いの一歩を踏み出した。




