絶望の放浪者-7
龍二が家に着いたのは夕暮れ時。
悠亜はすでに帰宅していてジョージを抱き撫でながらくつろいでいた。
「翼、お帰り。もうすぐご飯できるからお風呂入っちゃって。」
美佐子がキッチンから声をかける。
龍二は悠亜にゴロゴロ甘えているジョージに鋭い目つきで合図を送り、自室へと来るように促す。
一瞬ビクっとした仕草を見せたジョージは龍二のあとを追うように二階への階段を駆け上がった。
ジョージと共に部屋に入って扉を閉める。
龍二はベッドに腰を下ろし、ジョージはその傍らにちょこんと座る。
『で?組の方はどうだった?』
龍二の問いに、
『事務所の屋根裏に侵入して様子を見ていたんニャけど、剛のオジキはもう報復準備を始めていたニャ。
そしたら立見のオジキが来て、動くニャって説得していたニャ。
そりゃもう凄い口論にニャって怖かったニャ。』
ジョージが必死に説明する。
『親の命取られて動くなとは、立見のオジキは何を考えてるんだ!?』
龍二の感情が上がる。
『うちの親分(伊賀)が、大きな抗争になるのを止めているみたいなんだニャ。』
とジョージが申し訳ななそうに言う。
『伊賀のオジキが?なんでだ?』
『どうも、一水会にも抗争を避けたい派閥があるみたいで、そのあたりに手をまわしているらしくて、今は様子を見ろニャってことらしいんだニャ。』
『山崎についていった奴らが抗争を嫌がっているだと!?
ふざけんな!!組を割ったのは奴らの方だろう!!』
怒りをあらわにする龍二に、
『俺に怒らないでくれニャ…。』
とジョージが寂しそうに言う。
ふと我に返った龍二は、
『すまない。感情的になっちまった。
そうだな。お前も被害者だった。許してくれ。』
ジョージに謝る。
目の前の猫は自分が巻き込んでしまった弟分の成れの果てであったことを思い出す。
ジョージの頭を軽く撫でながら申し訳ない気持ちになる。
『ところでアニキの方はどうだったんだニャ?』
ジョージが問う。
その言葉を聞いて龍二は立ち上がり、左腕を垂直に上げ、
(ハント!!)
と唱える。
その手の先に弓が現れるのを見て、
『それ…なんなんだニャ!?』
と驚くジョージ。
さらに龍二は腰にも現れた矢の束から一本抜き弓にセットしググッと引く。
そして壁に貼ってあるどすこい娘のポスター目掛けて一発放つ。
そのポスターのセンターで笑顔を見せるデブッチョの顔に矢が刺さる。
『アニキ!?そんなもんどうやって出したんだニャ!?』
さらに驚きを見せるジョージ。
龍二はふっと力を抜くと、左手の弓とポスターに刺さった矢が姿を消した。
『ジョージ。組が動かないなら、俺たちでやってやろうじゃないか。
親父の仇を俺たちでとってやろう!!』
龍二の言葉にジョージは少し戸惑いを見せる。
『ジョージ?どうした?』
龍二はその態度に違和感を覚えた。
『アニキと一緒に親の仇を打ちたいのはやまやまなんだけどニャ…、お母さんや悠亜ちゃんを巻き込んでしまうことってないのかニャ?』
ジョージの言葉に龍二は一気に冷静さを取り戻した。
(たしかにこの姿で復讐を成し遂げても、身元がバレちまったらこの家族にも危険が及ぶ。俺は自分のことしか考えてなかったんだな。)
龍二はジョージがすでにこの家族の一員になったことを改めて認識した。
「ジョーくん!ご飯だよぉ!」
悠亜の声が聞こえてくる。
ジョージは、
「ニャン!」
と可愛い声を出して、龍二を一瞥して部屋の扉を無理やり開けて一階へと降りて行った。
(なにかいい方法を考えないといかんな…。)
龍二は再びベッドに腰を下ろして頭を抱えた。




