愛憎の守護神-7
龍二はジョージの【世話】を美佐子に任せて悠亜といつも通り学生生活を送ることにした。
今、茉莉のことを考えても何もできない。
自分を鍛えてこの榊原翼の体で茉莉を守れる術を手に入れるまで、時を見守る決意をした。
そしてこのタイミングで謎の男が現れる。
「やあ、氷室さん。久しぶりだね。」
男は嫌味なほど爽やかな笑顔でこちらに歩み寄る。
龍二は悠亜の肩を強めに押してこの場を離れるように促す。
この男が姿を現さなかった2週間で龍二は今この体でできる戦いのスキルを上げてきた。
(そう簡単にはやられないぜ…!!)
右手に単一の電池を握り、左手はどんな状況にも対応できるようにガード用にフリーにしておく。
心配そうな悠亜は男の横をすり抜け少し離れた地点で立ち止まり、様子を見ている。
「へぇ、なるほどね。じゃあ、その成果を見せてもらおうか。」
男は龍二の立ち振る舞いを見て、すべてを理解したかのように戦闘態勢に入る。
それは明らかに今までと違う素人を相手にするものではなく、本気の攻撃態勢であった。
龍二に一瞬の戦慄が走る。
男の早いハイキックを交わして距離をとる。
「ほう、今のは真剣に当てにいったのによくかわしたね。」
男の不気味な笑みを見ながら龍二は原点に戻ろうとしていた。
それは氷室龍二の戦い方。
もちろん今の榊原翼の体では限界がある。
しかし、どこまでやれるか…自分の今の限界を知る機会でもある。
龍二はアフガン時代にサンボ(軍隊格闘技)をマスターしているし、キックボクシングもプロ級の腕を持っていた。
立ち技も寝技も殺人者クラスの達人であった。
そんな自分にいきなり大きなハイキックを振ってくる男に、龍二のプライドを揺さぶる大きな怒りがこみ上げる。
もちろん今の龍二には、あの頃の戦いはできない。
しかし、あの頃の龍二の魂に火をつけるには充分な先制攻撃であったことには変わりない。
「翼くん!がんばって!」
悠亜が声を出す。
彼女もこの状況は理解していない。いきなり大人の男が攻撃を仕掛けてくる状況など理解しようがないだろう。
だが、彼女も本能で感じているのだ。これが榊原翼という人間に課せられた使命のひとつだと。だから、自分にできる事、それは翼を応援することにつながっていく。
(もう一発こい!!)
龍二は男にもう一度大きな振りのキックを誘った。
じわりと距離を縮める龍二に男は早いローキックを当ててくる。
膝をたたんでガードする龍二。
(それじゃない。)
ガードしてもダメージを感じる右ひざを踏み下ろし再び構える龍二に、男は胸元めがけて右のミドルキックを放ってきた。
龍二は待っていたかのようにその右足を捕まえ全体重をそれに乗せ男の右アキレス腱を固める。
龍二は掴んだ男の右足首を絞り上げていた。




