愛憎の守護神-5
美佐子の命令で商店街のペットショップにキャットフードを買いにいかされる龍二と悠亜。
「お母さん、なんか慣れてるよね。」
悠亜が楽しそうにいう。悠亜は美佐子をお母さんと呼んでいる。
(たしかに俺のウソにも敏感に反応して、手際よく必要なものをメモに書き出していたな。)
龍二は美佐子に【突然、猫が窓から入ってきて懐いた。飼っていいか?】の筆談にすぐさま行動を開始して二階に上がり、ジョージをチェックしながらチラシの裏になにやら書き出し、それを二人で買ってこいと指示を出した。
「ねえねえ!翼くん!猫ちゃんの名前何にするぅ?」
悠亜がはしゃいで見せる。
【ジョージ】
とLINEで送る。
「えーーーーー!かわいくない!」
不満そうな悠亜に、
【もう、決まっている】
と反論を許さない。
矢部譲二の生まれ変わりだ。ジョージ以外の選択はない。
「女の子かもしんないじゃん!」
悠亜が反撃にでるが、
【男だ】
ととどめを刺す。
悠亜との会話をしながら、龍二は茉莉のことを考えていた。
(加藤に脅されているのか?)
そう思わずにはいられない。
極東一家の直参で直系組織である山辰組から守られている茉莉の店に一水会の手が及ぶことなどあり得ない。
だから考えられるのは茉莉個人が加藤組から脅迫され、極東一家への攻撃の片棒を担がされているという答えに行き着く。
(茉莉…!!)
龍二は胸が締め付けられる。
天涯孤独で育った自分に【愛】というものを教えてくれた最愛の女。
その女が窮地に立たされていると思っただけで呼吸が荒れ苦しくなる。
人を愛することの幸せしか知らなかった龍二は今、人を愛する苦しさに直面しているのである。
突然うずくまる龍二。
苦しさが恐怖に変わった龍二は立っていられなくなってしまった。
「翼くん?どうしたの?」
悠亜が驚いた声を出して龍二の肩を摩る。
(情けねぇな、氷室龍二。なにもできずにこんなとこで腰ぬかしやがって…!!榊原翼のことを散々非力などと馬鹿にしてやがったくせに、一番非力で使えねえのは自分自身じゃねぇか…!!しっかりしやがれ!
てめえは荒ぶる獣王から子の盃を受けた極道だぞ!!)
龍二は自分を罵倒し鼓舞しながらゆっくり立ち上がる。
「大丈夫?顔色が悪いよ?」
悠亜が心配そうに顔を覗き込む。
その言葉に軽く頷いて、龍二はどうしたらこの体で茉莉を守れるか思考をフル回転して少ない選択肢を模索し始めていた。




