愛憎の守護神-3
5年前の出会いから愛を貫いてきた龍二。
そんな茉莉を思いながら今は高校生を強いられている。
龍二は2日前にリビングの戸棚の奥にほこりをかぶって眠っていたウイスキーを発見していた。おそらく榊原翼の父親が生前飲んでいたものだろう。
まだ半分以上残っている。
それを自分の机に隠した。
そのウイスキーを取り出し、ラッパで一口入れる。
体が榊原翼だから一口でかなり効く。
そして思い出す男の言葉。
榊原翼の体での使命。
それは大切なオヤジや茉莉から離れた場所に存在するという現実。
龍二はベッドから立ち上がり窓の外を見る。
夕日がまぶしい。
同じ空の下で跡目抗争は続いている。
もしかすると自分と関係がある茉莉の身にも危険が迫っているかもしれない。
(無力だ…。)
龍二はなにもできない自分に憤りを感じた。
ふと隣家の屋根を見ると一匹の猫がこちらを見ている。
その猫が俊敏な動きでこちらに近づいてくる。
窓を挟んで見つめあう龍二と猫。
真っ黒な猫が、暗闇で不気味に目を光らせている。
『にゃに見てんにゃコラァ!!』
突然しゃべりだす猫。
いや、言葉ではなく龍二の頭の中に語り掛けてくる。
(え?猫と会話してる?)
龍二は戸惑った。戦場で敵兵に囲まれた時よりも戸惑っている。
『てめえ、俺を誰だと思ってるんだにゃ!極東一家直参伊賀組の矢部譲二といったら泣く子も黙る極道だにゃ!おう?コラァ!』
(矢部譲二…。ジョージか!?)
龍二は窓を一気に開け、猫を捕まえ抱き上げる。
『離せコラ!殺されたいのかにゃあ!』
暴れる猫に龍二は、猫がコンタクトしてきた脳のチャンネルを感覚で合わせる。
『おい!ジョージ!俺だ!氷室龍二だ!』
それを聞いたジョージはわなわなと体が震えだした。
『龍二のアニキ?えーーーーーーー!本当にアニキにゃのか?』
ジョージは龍二の懐に飛び込んでゴロゴロ喉を鳴らした。
『ジョージ…。なんでお前、猫になっちまったんだ?』
龍二の問いに、
『アニキと一緒だにゃ。一水会の連中に殺られちまったんだにゃ。』
と悲しい声が響く。
『詳しく話せ。』
龍二はジョージを膝の上に乗せ、頭を撫でて落ち着かせた。




