深淵の追跡者-15
翌日から悠亜との強制的な通学が始まった。
同じ家からスタートして、同じ家に帰る。
龍二にとって悠亜は恋人という感覚は持てない。
榊原翼は16歳だが、中身は40歳の極道だ。
悠亜はあまりにも純粋で幼い。
悠亜が自分に好意を持っていることはわかっている。
しかし、これも時間が解決してくれると龍二は思っていた。
若い恋は熱しやすく冷めやすい。
いずれ悠亜もその気立てに合ったいい男に出会うだろう。
それまで悠亜を守ろうと龍二は心に決めた。
そんな思いにふけっていた龍二の目の前に、
「やあ。」
謎の男が久しぶりに現れる。
悠亜が身構える。
龍二はポケットから小さなメモを出し、
【先に学校に行け。誰にも言うな。】
と書いて見せる。
困惑する悠亜に、
【大丈夫だから。】
と書き足す。
怪訝な表情を男に向けながら悠亜は頷いてその場を去る。
「わかっているじゃない?」
男の余裕の笑みが龍二の怒りを一気に沸点まで上昇させた。
(今日こそぶっ殺してやる!!)
龍二はノーガードから左右に体を振って一気に間合いを詰める。
「ほう。特訓でもした?」
男は懐に入ろうとする龍二を前蹴りでけん制する。
一旦下げられた龍二は右側に回り込み続けざまに攻撃を入れる。
「やっぱり、極東一家随一のヒットマンの感覚は残っているんだね。」
男はそういうと長い脚をしならせたミドルキックで再び龍二の前進を止める。
(くそ!手が出せねえ…!!)
今日まで肉体改造に専念してきた龍二の努力をあざ笑うかのように男は攻撃をさせてくれない。
「だいぶ体もでき上がってきたね。いいよ。」
(舐めやがって…!!)
龍二は怒りにまかせて真正面から一気に攻め込んだ。




