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深淵の追跡者-11
肩で息をしながらチンピラの前に睨み立つ龍二。
「お、お前、なにもんだ!?」
明らかに怯えているチンピラに龍二は拳を握り詰め寄る。
「だいたいお前がいきなり俺の足を折るから悪いんだろ!」
チンピラが引きつった顔で言う。
龍二はノートを出し、
【俺とあの娘にかかわるな】
と書いて見せる。
「あの女か!?突然やめてくれとか叫びやがって。俺はただ道を歩いてだけなんだ!」
チンピラが言い訳がましく言う。
(どういうことだ?)
龍二は、
【くわしく話せ】
とノートに書く。
「俺は商店街を歩いてただけなんだ!そしたらあの女と目が合った。そのとたん叫んで助けを呼び始めたんだよ!俺は驚いちまって必死に宥めてたんだ。そしたらお前がいきなり俺の足を折りやがった!」
チンピラの言葉に龍二に疑念が生まれる。
確かにあの時、このチンピラは悠亜に対して乱暴なことはしていなかった。
さらに思い出す。悠亜が怯えている姿と、苦笑いで窘めるチンピラ。
(どういうことだ?)
龍二は困惑した。
しかし、悠亜に対して疑問も浮かぶ。
状況が混乱する中、龍二は悠亜の性格を思い出していた。
思い込みが激しく、自己完結型。
(悠亜、まさか…。)
龍二は、チンピラに、
【とにかく今日のことは忘れろ。そして二度とかかわるな】
と殴り書きを見せ、その場を去る。
そして悠亜の家へと全速で走り出した。




