深淵の追跡者-9
龍二を囲むように三人が位置する。
狭い路地だから距離は近い。
「タロー!やっちまえ!」
チンピラが一人の細マッチョに指示する。
長身のタローは大きなフックをぶん回す。
(遅い…!!)
龍二は軽々と交わす。
タローの大振りの攻撃をいくつか交わしながら、攻撃のタイミングを計っていた。
(身長は20センチぐらい高い…。ガタイは言うまでもないな。
打撃は通用しない。ならば…!!)
龍二はタローの攻撃と体を分析して次の動きを決めた。
タローの大きな右ストレートをミリ単位で交わし、懐に入り込み、伸びた右手を抱えてクルっと身を返して体重をタローに押し付ける。
そしてタローのストレートの力をカウンターのように利用して、その勢いで腰にタローを乗せて投げを放つ。
一本背負い。
柔道の技だが、ストリートファイトにこそ大きなダメージを与える大技だ。
しかし、これは揺るぎない決意と自信があるからこそ成せる技。
失敗すれば背中を見せる状況となり、後方から攻撃をノーガードで受けることになる。
敵に背中を見せるという危険極まりない戦法なのだ。
タローを背中に担ぎ、一気に投げに入る。
宙に浮くタローの体が逆さに垂直で円弧を描く。
その直後、龍二は態勢を変え、自分の体を一気に地面に倒す。
その勢いでタローは頭部からアスファルトに落下し、脳天を地にめり込ませる。
受け身すら相手にさせない一本背負いからのパイルドライバーともいうべき殺人級の大技。
タローは脳震盪を起こしたかのように頭から血を垂れ流しピクリとも動かない。
柔よく剛を制す。
百戦錬磨の龍二が榊原翼の体でもやってのける戦闘能力の高さが物語る勝利であった。




