深淵の追跡者-2
「つーばーさーくーん!」
あの日以来、佐藤悠亜は榊原翼の登校を待ち伏せしていた。
商店街で助けた佐藤悠亜は同じ高校のクラスは違うが同級生であった。
「一緒に学校行こ!」
そう言って悠亜が手を差し伸べると、龍二はその手を無視して通り過ぎる。
「ちょっと待ってよぉー。」
それでもめげずに悠亜は龍二にくっつく。
すると龍二は立ち止まり、「邪魔だ」という意思を目で伝えその手を払った。
「ひどいなぁ……。」
悠亜は苦笑いを浮かべると、また龍二の隣を歩き始める。
そして学校に着くと、
「またあとでね!」
と自分のクラスに走って行く。
(なんで毎日俺と一緒に来ようとするんだ?)
そんな疑問を抱きながら、龍二も教室に向かう。
空気のように目立たず生きていきたい龍二には厄介な存在だ。
しかも、悠亜は目立つ。
誰に対しても明るく接しているし、誰からも好かれているようだった。
容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能の三拍子そろった彼女の人気は高く、多くの男子生徒が彼女に好意を寄せている。
ただ、それだけの人気にもかかわらず、浮いた噂ひとつないのだから不思議である。
最近ではこの光景を同級生にチラチラ見られている。
(とにかく厄介な女だ。)
龍二はため息をつくと、席に着いた。
そして放課後になり帰り支度をしているところに悠亜が現れた。
「翼くん!帰ろう!」
「…………」
無視して帰るつもりだ。
悠亜は龍二の周りをぐるぐる回りだす。
「ねぇ、いいじゃん?帰ろうよ〜。」
このやり取りはもう一週間続いている。
昨日は走って逃げたが、この女は足も速い。
速攻で捕まり、一緒に帰る羽目となった。
(そのうち飽きるかと思ったら、いつまでも付きまとってきやがる。)
龍二は無理やりスマホに登録させられたLINEに、
『俺に付きまとうな!』
ガラケプッシュで打ち込み送信。
悠亜は自分のスマホを開き、それを確認。
「なんでそんなこと言うのぉ~?」
と言い、悲しい顔を見せ、
『ピエン』
と打ち返す。
『口のきけない俺と一緒にいたって退屈だろう?』
龍二は言葉を選んで、優しく諭す作戦に切り替えた。
それを見た悠亜は表情が笑顔に変わり、
「大丈夫!私は一緒に居たいだけだから!さ、帰ろ!」
と言って龍二の手を引っ張る。
(この女はハッキリ言わなきゃわからんのか!?)
作戦失敗の龍二の気持ちなど関係なく、悠亜は楽しそうにひとりお喋りを続けていた。




