深淵の追跡者-1
「やめてください!」
女の叫び声。
いつものように商店街の帰り道を楽しんでいたら、女が男に絡まれていた。
明らかなチンピラ風の男に女子高生の組み合わせ。
しかも制服が見慣れた自分の高校のもの。
(ナンパか?)
こんな昼間にガラの悪い男が必死に嫌がる女子高生にちょっかいを出しているのを見ると、それしか考えられない。
その光景を見て見ぬふりする多くの群衆。
その流れに紛れて龍二も通り過ぎた。
少し歩いた龍二だが、
(そういうわけにはいかんよな…。)
立ち止まった龍二はため息をついた。
振り返り女の腕を引っ張りながら薄ら笑う男を遠目に見る。
(180センチ程度でガタイもいいな。腕力じゃ勝てん。いや…総合的に正攻法じゃ太刀打ちできんな。)
龍二は次に自分の体を再確認する。
(165センチ、体重は…もやしのような小僧。さて、どうやって〆るかな?)
龍二は周囲を見渡す。
目に留まったのが改装工事の空き店舗。
そっと近づき、作業者に気づかれないようにさっとバールをくすねる。
(すまん、後で返すからな。)
龍二はバールを手にし、男の背後に立った。
そして男の右ひざめがけて力いっぱいバールをスラッガーのように打ち振り抜いた。
男の膝にバールが当たった瞬間、バキっというあまりにも気持ちのいい破壊音が響いた。
「うがーーーーーー!!!」
倒れる男。
これで動きを封じた。
龍二は女に、首を振って「逃げろ」とジェスチャーで伝える。
困惑したような女の顔に、もう一度同じ指示をする。
それでやっと気づいたようで、走り出す女。
龍二もバールを元の場所に戻し、急いでその場を走り去った。




