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龍の翼-13
数日間、登校してわかったことがいくつかあった。
まず一番は、この榊原翼という存在である。
恐ろしいぐらい誰も話しかけてこない。
いや、むしろ空気のように誰とも目すら合わない毎日であった。
榊原翼という人間は、誰の目にも映っていないのである。
これは、彼がこの世界で孤独であったといえる。
いや、もしかすると榊原翼自身がそれを望みそれを実践していたのかもしれない。
だから、こんなもやしっ子の素朴な少年がイジメにすらあわずに生き残れる手段であったと想像がつく。
この学校はすべての生徒がライバルである。
その世界の中で生きていくには、このサバイバルを潜って過ごすことが榊原翼にできる最善の策であったのかもしれない。
(こういう生き方もあるんだな…。)
龍二は榊原翼の生き様を思うと切ない気持ちになった。
彼は普通の高校生らしくアイドルを追いかけ、両親はいないが祖母の愛情を存分に受けている。
しかし、この戦場ではその個性をすべて消し去りステルスの自分を演じているのである。
この榊原翼の人生を引き継ぐには自分はイケイケすぎる。
果たしてどこまでこの生き方を通せるのだろうか?
龍二は葛藤の渦に巻かれていた。




