龍の翼-12
翌朝、龍二は学生服に身をまとった。
ボサボサだった髪も美佐子が奇麗に切ってくれた。
今日から休学していた高校に復帰だ。
数々の修羅場を潜り抜けてきた龍二が初めて体験する高校生活。
柄にもなく緊張が走る。
紺のブレザーにネクタイを締め、カバンを背負い美佐子の運転する軽自動車に乗り、都立修学館へと向かう。
龍二は知る由もないが、公立では超一流の進学校である。
学校に到着し、歴史ある校舎には学生が溢れている。
記憶障害と言語障害といういうことを担任らしき小娘に美佐子が伝え、その真鍋という教師は神妙な表情で龍二に優しく接する。
心配そうな美佐子を残し、真鍋のあとをついて教室へ向かう。
1-5と書かれた教室。
(ここが俺の新たな戦場か…。)
龍二は気持ちを引き締め教室へと一歩踏み込む。
40人ほどのクラスメートが神妙な顔で席についている。
「みなさん、今日から榊原くんが帰ってきましたよ!」
真鍋がまるでオペラのヒロインのような澄んだ声を響かせる。
(は!?)
真鍋の言葉に反応がないクラス一同に龍二は驚いた。
(シャバから出てきて出迎えがその態度か!?)
龍二の憤りとは裏腹に、教室は静けさを保っている。
とりあえず榊原翼の席らしき空いた机に座った。
「榊原くんは少し記憶と言葉に後遺症がありますので、みなさん助けてあげてくださいね。」
真鍋が言うが反応はゼロである。
(居心地が悪いな…。)
龍二はこれまで感じたことのない重圧に襲われていた。




