猫の恩返し-9
商店街のカフェでスイーツを食べながら和解している悠亜と紅蘭。
元来、明るくて誰でも仲良く話ができる紅蘭と、穏やかで人見知りしない悠亜は友達になれる性格同士である。カバンの中でうたたねするジョージは、二人の会話を心地いい気分で聞いていた。
そして何より、今起こっている戦いの中に二人は存在する。
だから友達になれたとしても、次に会えるのはいつになるかわからない。
それを理解しているのが敵中に忍び込んでいる紅蘭であり、行動的な性格が仇となり巻き込まれる結果となった悠亜は新たな出会いを喜び、LINEの交換をせがんでいた。
何気ないガールズトークが一段落したところで、カフェを出て商店街を歩く。
夕方の商店街は夕飯の買い物客で賑わっている。
すると二人の前に三人の男が立ちふさがる。
「よう、ねえちゃん。ご無沙汰やのう。
待っとたで。ここで3日もあんたを探しとったんや。」
加藤組傘下のチンピラ。数か月前にここで龍二に足をへし折られた男。
同じく龍二に〆られた舎弟のタローとジローも両脇に控えている。
ただ悠亜の顔は不思議顔。
あの時の悠亜はトランス状態だったため、チンピラの顔すら覚えていない。
ここで紅蘭が啖呵を切る。
「てかオッサン誰?てか何?」
とげとげしい口調で詰め寄る。
普段、ヤクザ幹部を相手にしている紅蘭にとって、目の前のチンピラなど恐るに足らない。
次はタローが紅蘭に迫る。
「部外者は引っ込んどれ!!さもなくばお前も拉致るぞ、コラァ!!」
タローと紅蘭のバチバチの睨み合い。心配そうに悠亜が見守る。
「ねえちゃんバッチリ映っとったで。監視カメラにな。
ちょっと一緒に来てもらうで。痛いめ合いとうなかったらおとなしくついてきいや。」
チンピラが悠亜に手を伸ばすが紅蘭がそれを払う。そして怒鳴る。
「おい、チンピラ!!
お前らはバカか?こんな時間に街中で女子高生を拉致るだと?
シロウト丸出しだな!!
ふつうは商店街を抜けてしばらく歩かせておいてから、人気のないところで車に押し込む。これ常識!!
おととい来やがれ!!いや、二度と来んな、バーカッ!!」
言われたチンピラは顔を真っ赤にして怒りを露にしている。
「このクソ女が…!!ジロー、とっとと捕まえろ!!」
チンピラの指示でジローが一歩踏み出した瞬間、
「キャーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!」
と紅蘭が大きな悲鳴を上げる。そしてチンピラにニヤリと笑みを見せる。
商店街中に轟いた紅蘭の声に通行人や商店の人間たちが反応する。
さらに紅蘭の合図を察した悠亜も、
「誰かぁーー助けてくださぁーい!!」
と声を上げた。
そして二人で騒ぐ。
「イヤーーーーーーッ犯されるーーー!!」
と紅蘭。
「さらわれるゥーーーー!!」
と悠亜。
どんどん周りに人が集まる。
「アニキ!!今日は諦めましょう…!!」
タローがビビッて後ずさりする。
「このクソアマどもめ…!!舐めやがって…!!」
チンピラの怒りが最高潮に達する。
「今、警察呼んだから!!」
誰かの声。この言葉にチンピラの顔が一変する。
怒り起った顔が真顔になっていた。
「ま、ねえちゃん連れて帰りゃあ親分にも顔が立って、あとは風俗にでも売り飛ばそうと思ってたんだがどうでもいい。
もう入院している兄ちゃんの家は病院から聞き出して足が付いた。
今頃、兄ちゃん家で加藤の兵隊が暴れまくってるだろうよ。
クククッ…。
ヤクザ屋さんを舐めてっとこうなるんだよ。
それに、収穫もあったからな。
タロー、ジロー。帰るぞ。」
チンピラは紅蘭を見ながらニタリと不吉な笑みを向けて集まった人込みを振り払いながら去っていった。
一気に青ざめる紅蘭と悠亜。
紅蘭が素早くスマホを取り出し手早く操作。そして、
「悠亜ちゃん、家に電話して!!」
と怒鳴るように指示を出す。
あわてて悠亜もスマホを出して美佐子に電話する。
「もしもし姉さん!!緊急事態なの!!」
紅蘭は優に連絡。指示を仰ぐ。
「お母さん出ない!!」
悠亜が悲痛な叫びを発する。
その時、悠亜のカバンからジョージが飛び出した。
(お母さんが危ないニャ!!!!!!)
ジョージは家に向かって一歩踏み出した。
しかし立ち止まり振り返って悠亜を見る。
なぜそんな行動をしたのかはジョージもわからない。
ただ無性に大好きな悠亜の姿を見ておきたかった。
再びジョージは前を向き全力疾走で家へと走り出した。
背中で紅蘭が、
「警察に電話して!!」
と悠亜に激を飛ばしている。
(お母さん…!!お母さん!!)
ジョージは愛する母の元へと急いだ。




